講談社『僕はパパを殺すことに決めた』調査委員会報告書

 ニュースソースの鑑定医が秘密漏示罪で逮捕された『僕はパパを殺すことに決めた』について、講談社が社外の有識者で調査委員会を組織し、取材・編集上の問題を調査した。その報告書が講談社のウェブに公開されている。この報告書、ひとつのルポルタージュになっている。事件が事件だけに面白いとは言っていけないのだろうが、なぜ今回の事件が生みだされたか、なぜ情報提供者を守ることができなかったかがリアルに描かれている。鑑定医は調査委員会に「私は、いまでも供述調書を見せたことは後悔していません。しかし、見せる相手を間違えたことは、後悔しています」という。取材先の人に、こう言われてしまうこと自体、取材に問題があったんだろうなあ。出版に際して社内で、ただひとり反対論を展開した週刊現代の編集長(当時)は調査委員会のヒアリングに、供述調書の引用によって構成された、この本について、こう言ったという。「文章を書いたのは警察官。書く理由は祖父にあずけ、じゃ、書き手は何者なんだということになりませんか」ーー最初は真実の追求から出発したのかもしれないけど、それぞれの野心やら、計算やらで道に迷い、商業主義、センセーショナリズムになってしまったのかもなあ。とか、いろいろと感じてしまう出色のルポルタージュでした。
講談社の<『僕はパパを殺すことに決めた』「調査委員会報告書」ならびに「講談社の見解」発表にあたって>ページ(ここに報告書と見解がPDFで置かれている)
 http://www.kodansha.co.jp/emergency2/index3.html