リチャード・オルセニウス「ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 モノクロ写真」

ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 モノクロ写真

ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 モノクロ写真

 このところ、カメラに関心があって読んだのが、これが面白かった。モノクロ写真の実例(しかも、ナショナル・ジオグラフィックだから、超一流のモノクロ写真)が豊富な上に、モノクロ写真のテクニックと、この分野で一級のカメラマンのインタビューが収録されている。たまりません。プロの人や高レベルのマニアから言わせれば、当たり前かもしれないけど、素人から見ると、なるほどぉという話がいろいろと出ている。
 例えば、いまは新聞もカラー写真が一般的なのだが、まだカラー化以前の新聞カメラマンからスタートした著者の回想・・・。

 当時の私たちは、一面に赤いシャツの人物の写真をもってこなければならないとか、写真の中の黄色が大見出しの色と合わないのではないかと悩む必要はなかった。

反対に言うと、カラーになったがために、写真自体の純粋さとは別の要素が入ってきてしまっているんだな。紙面デザイン全体の中での色彩的調和とか。モノクロ写真に心惹かれ、モノクロに芸術性を感じてしまうのは、フォルムとか陰影とかに集中できるからなのかもしれない。で、テクニックとしても面白いのは・・・

 写真には決まりごとがある。一つは、真昼には撮影しないこと。真昼の日差しは強すぎて写真を撮るのには適していないからだ。一方、曇りの日の日差しはそれほど強烈ではない。モノクロの写真は、木陰や曇りの日のほうが合っている。

 カメラに詳しい人には常識なのかもしれないが、へえっという感じ。この話は、他のカメラマンのインタビューの中にも出てきて、自然を撮るには曇りの日がいいと。天気が悪ければ、悪いほどいいみたいな話さえあった。モノクロ写真を極めるには、光の性質を知ることが繰り返し強調されている。モノクロの一流カメラマンは、光と影の魔術師ということかも。
 もうひとつ印象的だったのは、モノクロ写真を主体にするカメラマンは、銀塩フィルムやら、現像やらに、こだわるのかと思ったら、そんなこともない。むしろ、技術革新を積極的に採り入れていく。フィルムをスキャニングすることもあれば、デジタルカメラも使うといった風情。4×5インチの大判カメラにデジタルバックをつけて使うなんていうことも紹介されている。後処理でも、いまや暗室よりも、Photoshopを使って、画像をつくっていく。デジタル処理が当たり前の時代になっているんだなあ。プリンターとしては、Epsonの評価が高かった。