東京都写真美術館企画・監修「ウジェーヌ・アジェ回顧」
- 作者: 東京都写真美術館
- 出版社/メーカー: 淡交社
- 発売日: 1998/09
- メディア: 単行本
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その業績は生前は認められることもなく、孤独と悲しみのうちにこの世を去っていく。アジェは自分の写真について何も書き残していない。彼は、失われゆく19世紀のパリや近郊の町並や庭園を正確に記録することにのみ努めたのである。彼の写真からは、そうした都市の記録者に徹した透明な眼差しを看取することができる。そして、その眼差しこそが、人々を魅了してやまないのである。
アジェは挫折した芸術家だった。演劇も、絵画も、うまくいかず、写真を撮るようになったという。写真のスタジオでもあったアパートのドアには「芸術家のための資料」という看板をかけていたというから、自らの写真の芸術性は自覚せず、画家の資料として写真を考えていたようだ。顧客には、藤田嗣治やヴラマンクがいたという。しかし、モノクロ写真はいいなあ。