木村伊兵衛「僕とライカ」

僕とライカ 木村伊兵衛傑作選+エッセイ

僕とライカ 木村伊兵衛傑作選+エッセイ

 伝説的カメラマンの木村伊兵衛の「傑作選+エッセイ」。ライカって、小型・高機能の革命的カメラだったのだなあ。土門拳との対談「光について」、徳川夢声との対談「問答有用」が面白かった。面白かったのは、木村伊兵衛が語るプロフィール写真を撮る場合の男と女の違い。

 立派な政治家でも実業家でも、写すまでにゃ、かなり待たしますよ。おいそれとはいかない。待っている、入ってきますね、その時に、一番いいところをパッと出しますよ。ですから、男の人の場合には、たいがい第一回でいい写真がとれます。何回もやってると、だらしがなくなって、政治家なんてのは、越中ふんどしのひもを出しちゃったりする。(笑)男は最初にいいのがとれるから、らくなんですけども、女のほうは、なかなかそうはいきません。はずかしがたり、恐怖を感じたり、いい女にとられようと思ったり、いろいろ複雑なものがある。写真をとる場合、男とはちがって、時間がたつにつれて、だんだん色っぽくなってきますね。顔でもなんでもあぶらぎってきたり、上気してきたり、きれいになるんです。着物が多少くずれてきたり、シワが出てきたりね。そういうところが出てくるのに、相当の時間がかかります。

 なるほどなあ。