野田宣雄「歴史をいかに学ぶか」

歴史をいかに学ぶか―ブルクハルトを現代に読む (PHP新書)

歴史をいかに学ぶか―ブルクハルトを現代に読む (PHP新書)

 副題に「ブルクハルトを現代に読む」。ブルクハルトは、名前は知っていたが、どんな歴史学かは知らなかった。何とはなしに読み始めたのだが、これが意外と面白かった。進歩史観を排した人で、時代とともに人間が進化するというような幻想を抱かなかった。このあたりの視点は現代に通じる。後世の人間が「上から目線で見る」のではなく、あるがままに歴史を捉えようとするという態度は興味深い。歴史学の主流派と距離を持ち、スイスのバーゼルという周縁部から世界を見ていたところから、他の人には見えないものが見えたのかもしれない。著作を読んでみようかと思う。ニーチェと友人だったというのも面白い。こんな一節があった。

ブルクハルトは、1870年(普仏戦争のあった年)に友人に宛てた手紙の中で、「<汝の家を整えよ>ーーこれが、中部ヨーロッパ全体のなかで、私たちすべてがなしうるもっとも賢明なことである」と書いている。

 戦国時代に隠棲した人みたいだなあ。でも、なんか、わかるなあ。それが「歴史の危機」に直面した知識人の身の処し方なんだろうか。人間嫌いではなかったみたいだけど、諦観の人だったのかなあ。