ウィリアム・ケントリッジー歩きながら歴史を考える(国立近代美術館)

ウィリアム・ケントリッジ(1955南アフリカ共和国生、ヨハネスブルグ在住)は、1980年代末から、「動くドローイング」とも呼べるアニメーション・フィルムを制作しています。木炭とパステルで描いたドローイングを部分的に描き直しながら、その変化を1コマ毎に撮影する気の遠くなる作業により、絶えず流動し変化するドローイングを記録することで生まれる彼の作品は、独特の物語性と共に集積された行為と時間を感じさせる重厚な表現となっています。

 ポスターが印象的で何となく気になっていた現代アート展だったのだが、時間が空いたので見に行ってみた。なかなか面白かった。ドローイングのアニメは印象的。描いているのは、南アフリカアパルトヘイトだったりするのだが、イメージは何となく1930年代的な感覚が漂う。戦争の実写を使っているところがあったが、これも第一次大戦のフィルムだったりして、そうした画像とマッチするところから見ても、1930年代的雰囲気を感じてしまう。ドローイングや影絵を使ったアニメなど、どれも新鮮だった。印象的だったのは、最後に展示してあった、ショスタコーヴィチのオペラ『鼻』を題材にした最新作「俺は俺ではない、あの馬も俺のではない」(2008)。この中で、ソ連共産党中央委員会で糾弾されたブハーリンの弁明を字幕だけで見せていく。この手法、サイレント映画の字幕のように、画面にあるのは文字だけなのだが、臨場感があり、ドラマになっている。この手法はいろいろと応用できそうだし、面白いと思う。
 この展覧会、まず京都国立近代美術館で開催され、続いて東京に来たようだが、サイトは京都の方が充実していた。ということで、冒頭の展示会紹介は、京都国立近代美術館の説明。
展覧会のオフィシャルサイト
 http://www.momat.go.jp/Honkan/william_kentridge/index.html#outline