ヴェルサイユ宮殿美術館 Château de Versailles

 ヴェルサイユ宮殿もまたMuséeであった。パンフレットを見ると、「ヴェルサイユ宮殿美術館」とある。宮殿そのものはもちろん、家具、彫像から絵画に至るまで全てが芸術作品。絶対王政というか、その権力のすさまじさを体感もする。そして、革命を経ても、これを維持、保存しているところに歴史と芸術に対する思いの深さ(執念)を感じる。すごい国だなあ。
 絵画では、ここにもダヴィッドの「ナポレオンの戴冠式」がある。ルーヴル美術館に所蔵されている作品と同じ(作者自身による複製)だが、参列する女性のうちナポレオンの妹だけがピンクのドレスになっている別バージョン。ダヴィッドのことを権力者におもねった「ごますり画家」のように言う人がいるが、巨大な宮殿の一室の壁いっぱいを占める大作を2枚も描き、しかも、皇帝の妹の服だけ色を変えているのを見ると、そういわれるのもわかる気がしてくる。やっぱり実物を見てみるもんだ。
 ここも写真はフラッシュを使わなければ自由なのだが、1カ所だけ、撮影禁止の場所があった。「Versailles Photographié 1850-2010」という写真展を開いているコーナーがあったのだ(撮影制限は写真の著作権のためなのだろう)。眺めていると、アジェやアンリ・カルティエブレッソンが撮影した写真もあった。歴史の厚みだなあ。ファッション写真風のモノもあり、いろいろなシーンに使われていることもわかる。
 雪で寒かったのと、時間がなかったので、庭園を歩いて回ることはあまりできなかったが、ともあれ巨大な宮殿。「絶対王政」という言葉が頭に浮かんでくる。パリの街並みとの落差は激しい(パリ改造後に整備された大通りではなく、路地裏のほう。今となれば、味わい深いのだが、どこか薄暗い感じがする)。ここから革命が生まれたのかとも思ってしまった。と同時に、印象に残ったのは、ヴェルサイユがパリ市街から離れていること。パリの市街地の端にあるのかと思ったら、郊外といったほうがいい。東京で言えば、23区外、立川市、八王子市といったところか。王もパリを嫌ったのだろうが、そんな王を市民も嫌ったのかもしれないなどと勝手に考えてしまう。革命時、パリの市民がヴェルサイユまで押し寄せたというのも距離を考えると、すごいと思う。これだけの距離にもかかわらず、群衆が押し寄せてきてしまうこと自体、王にとって恐怖だっただろうなあ。
公式サイト
 http://www.chateauversailles.fr/homepage
 公式サイトでカバーされている言語は、フランス語、英語は当然なのだが、もうひとつが中国語。そういう時代になったのだなあ。