マイケル・ルイス「ブラインド・サイド」

ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇蹟

ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇蹟

 サンドラ・ブロックが念願のアカデミー主演女優賞をとった映画「しあわせの隠れ場所」の原作。でも、だから、読んだのではなくて、「ライアーズ・ポーカー」「マネーボール」のマイケル・ルイスの本だから。
 アメリカンフットボールにおけるレフトタックルの価値拡大(報酬向上)と、デブのホームレスから有望選手へと数奇の運命をたどるマイケル・オアーの話が交錯しながら進んでいく。攻撃の要であるクオーターバックのブラインド・サイドから来るディフェンダーの攻撃を防ぐことが重要度を増し、そこからレフトタックルの価値が上がる。その役割を担えるのは、巨体でありながら、動きは機敏という「自然のいたずら」がないと、なかなか担えない。黒人のスラム街の、その中でもさらに厳しいホームレスの状態から、マイケル・オアーが抜け出せたのは、その「自然のいたずら」といえる肉体があってとはいえるが、その一方で、本人の向上心、周囲のサポートがあってのこと。特に、テューイ家の支援なしには難しかった。米国の大学では、一定の成績がとれないと、運動競技に出場できない。このために、満足な教育の機会がなかった黒人の多くは高校で消えていってしまう。そうした米国社会の実態も描く。
 読み終わってみると、マイケル・ルイスらしい作品。ただ、アメリカンフットボールの記述が長いのだが、「マネーボール」の野球と違って、あまり馴染みがないだけに、もうひとつイメージが湧きにくいところもあった(映画は見ていないが、このアメフトの歴史は映画ではカットされているんだろうな)。
 で、本では、マイケル・オアーはまだミシシッピ大学の学生で、NFLで巨額の契約金をとる選手になるだろうというところで終わるのだが、ウィキペディアを見ると、2009年に、ボルチモア・レイブンズに入り、5年間で1380万ドルの契約金を得たという*1