ギルバート・グレイプ

 いまをときめく超人気俳優、ジョニー・デップレオナルド・ディカプリオが共演した映画。ラッセ・ハルストレム監督の静かな佳作。「パイレーツ」以前のデップと「タイタニック」以前のディカプリオは、こうしたアート系の作品に好んで出ていた。この映画では、ディカプリオが知的障害をもつ少年、その心優しい兄をデップが静かに演じる。ディカプリオの演技は迫真に迫っていて、うちのかみさんなど、最初に見たときは本当に障害をもった子が出演しているのかと思って見ていた。レオ様はこの演技でアカデミー助演男優賞にノミネートされている。
 最も印象に残っているのは、いろいろな事件が重なり、切羽詰まり、心理的に余裕を失った兄のデップが、なかなか言うことを聞いてくれない弟に苛立ち、思わず感情に任せて弟を殴ってしまい、そのあと自己嫌悪に陥るところ。すごくリアルだった。良い人間であり続けることは難しい。どうしても抑えていたものが爆発してしまう瞬間がある。そうした場面が描かれて、映画に生身の人間を感じることになる。こうしたあたりは「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」のラッセ・ハルストレムの映画だなあ、と思う。デップとディカプリオのふたりを同時に考えると、どうしても、この映画を思い出してしまう。