ヨハンナ・シニサロ『天使は森へ消えた』

天使は森へ消えた

天使は森へ消えた

 フィンランドのあまりにもフィンランド的な小説。北欧の森にはトロール(トロッリ)という妖精が棲むという伝説がある。ムーミン、正確には「ムーミントロール」もそのひとり。この小説では、ペイッコというトロールがゲイのグラフィック・デザイナーの前に現れる。登場人物は天使のように美しいゲイのミカエルを中心に、彼が愛する広告代理店の男、彼を愛した獣医の女友達、隣人のフィリピン人妻、彼を愛する男と、きわめて現代的な設定なのだが、小説の背景にトロール伝説やらフィンランドの民話「カレワラ」が絡んでくるので、正直、いまひとつ乗り切れないというか、遠い感じがした。
 この小説も、カリ・ホカタイネンの『マイホーム』と同じように登場人物が交錯しながら、各々の視点から話が進んでいく。フィンランドの作家は、この形式が好きなのだろうか。2作だけではわからないが...。
【やぶしらず通信・関連ログ】
 カリ・ホタカイネン『マイホーム』を読んで => http://t.co/pX8L0YW
マイホーム 小さなトロールと大きな洪水 (講談社 青い鳥文庫) たのしいムーミン一家 (講談社文庫)