岡部明子『バルセロナ』
- 作者: 岡部明子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/08/01
- メディア: 新書
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で、印象に残ったところをいくつか抜書きすると...
FCバルセロナは、1899年、スイス人実業家ハンス・ガンペルによりサッカー愛好家とともに創設された。発足10年足らずで会員1万人を超えたが、1929年世界恐慌の経済状況でガンペルは自殺し、市民戦争中にカタルニア主義者のJ・スニョル会長(在任1935〜1936年)がフランコ派に殺された。フランコの勝利した頃には、会員2500人にまで減り、クラブ存続の危機に追い込まれていた。
そんな悲劇的な歴史を持つクラブだったのか。バルサの中古の祖であるJ.L.ヌニェスは、フランコ政権に取り入り財をなした不動産業者で、とかくの噂のある人物だった。2007年には不動産開発をめぐる不正で告発されたこともあるという。そのため、過去の悪行を覆い隠すためにバルサを利用したという批判もあるそうだ。それについて筆者は...
実際そうかもしれないが、ヌニェスに損得勘定抜きの「ヴィスカ! バルサ!」の思いなくして、世界的チームバルサは育たなかっただろう。多くのサッカーチームが経済的に行き詰って株式会社化され、スポンサー収入に頼った経営に向かう時代に、ヌニェスは、会員制クラブとしてのバルサを頑なに守り抜いた。サポーターの量を増やす一方で質も忘れなかった。会員として会費を支払い、経営に参画してくれるサポーターを大切にした。会員の共同出資でクラブを維持していくことにこだわった。そのため、選手のユニフォームには広告を入れていない。例外はユニセフのロゴだけである。
そういうチームだったのか。だから、ユニセフと並んでカタールの財団のロゴが入ることがニュースになるわけか。バルサの歴史からみれば、画期的なことだったわけだ。