ホンダの子会社が連結利益に150億円の損害を与える不適切取引。しかも、水産物取引で...

ホンダ(7267)は24日、全額出資子会社で不適切な取引があったと発表した。商社業務を担うホンダトレーディング(東京・千代田)で、2004年ごろからシラスやエビなど水産物の取引で、相場価格を大きく上回って仕入れたり、1度の商取引を何回も売買したように見せかけていた。2011年3月期連結業績に対する影響は税引き前利益で約150億円のマイナス要因となる見込み。ホンダトレーディング水産物業者から水産物を購入するかたちで一時的に預かり、水産業者がほかの業者に卸売りする段階で一定の利益を上乗せして売り戻す取引をしている。不適切な取引の結果、在庫残高が増加し、売上債権の回収遅延を招いたという。

 いくら商社業務を担当する会社だといっても、何でホンダの子会社が水産物取引に手を出していたのだろう。ホンダが発表した資料をみると、水産業による、こうした取引は「預かり在庫取引」というらしい。で、ホンダの説明はこんな具合。

「預かり在庫取引」とは、HT社が取引先である水産物業者から、水産物仕入れ期(漁期)と販売期のずれを埋める目的で、水産物業者が仕入れた水産物を引き取り、一定期間経過後に売り戻す取引を指します。

 HT社とは「ホンダトレーディング」のこと。問題は、この買い戻し条件付きともいえる取引を「相場価格を大幅に上回る仕入れ金額」で預かり、しかも「同一商品を複数回にわたり反復させた取引」をしていたこと。想像できるのは、預け元側は、資金繰りをつけるためにカネが欲しかったのだろうし、HT側としては、買い戻し条件があるので利ザヤが抜けるうえ、取扱高が増え、売り上げが増えたように見えるメリットが大きかったのだろう。いつまでも続かないことは常識でわかるんだろうけど、相場が上がればとか、根拠のない希望的観測というか、いつか何とかなるという願望で、回しているうちに膨らんでいったのだろうな。いわゆる「循環取引」だったのだろうか。典型的なパターンにみえるけど。
 でも、監査法人なり、子会社の管理部門は気がつかなかったのだろうか。売り上げが不自然に増えたり、在庫が急増したり、兆候はありそうだけど。ホンダトレーディング(HT)の連結売上高は2010年3月期で5886億円。生活産業部門は売上比率が全体の4.2%だから、247億円程度と思われる。そこで150億円の損を出しているんだから、尋常じゃない。ただ、HTの売り上げを見ると、2008年3月期の8996億円から09年3月期には8243億円、そして6000億円を割ったのだから、自動車不況による急激な売上減少で、焦っていたのだろうな。当初、担当者は売上を作って、ほめられていたかもしれない...。想像だけど、会社では、よくある話だから。
 ホンダが昨年10月に発表した2011年3月期の連結税引前純利益の予想額は5350億円だから、今回の150億円の損害は3%近いダメージ。ホンダから見れば、小さいといえば小さいし、大きいといえば大きい。しかし、あのホンダが「不適切」な水産取引で傷つくなんて、本田宗一郎が泣いているなあ。
★ホンダの発表資料「当社子会社における不適切な取引について」
 http://www.honda.co.jp/news/2011/c110124.html
★ホンダの2010年度第2四半期・連結決算報告書
 http://www.honda.co.jp/investors/financialresult/2010/2010_2nd/Financial_Result_2010_2q_J.pdf
ホンダトレーディングの「業績」ページ
 http://www.hondatrading-jp.com/profile/annal.shtml
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