ムバラク大統領退陣求める民衆運動の高まりで混迷深めるエジプト。米国の中東政策にも激震?

約30年間にわたり強権体制を敷くムバラク大統領の退陣を求める大規模デモが28日に国内各地で起きたエジプトでは、治安部隊などとの衝突で、首都カイロや北東部スエズなどで多数の死傷者が出た。フランス公共ラジオによると、少なくとも20人が死亡、けが人は1000人を超えた。

 チュニジアジャスミン革命に端を発した反政府運動はエジプトに飛び火、混乱が拡大している。死者も20人を超えた様子。しかし、ムバラク大統領は強気。

大規模な反政府デモが続いているエジプトのムバラク大統領は29日未明、テレビ演説で、現在のナジフ内閣を総辞職させ、新内閣を発足させると発表、自身は大統領にとどまる考えを表明した。ムバラク氏退陣を要求しているデモがこれに失望し、反発する可能性が高く、混乱と治安悪化に拍車がかかる恐れが強まっている。28日のデモだけでも参加者は全国で100万人規模に達したとみられる。

 引き続き、力で封じ込めようというわけだが、果たして、それで乗り切れるのかどうか。何となく、イランのパーレビ政権の末期のような感じも。ムバラクも、パーレビも、親米だったが、秘密警察で反政府とみられる活動を弾圧してきた。弾圧というと、民主化運動に対してと思いがちだが、弾圧対象にはイスラム原理主義も入っている。アルカイダのナンバー2であるザワヒリ武装テロに過激化していったのは、エジプトで秘密警察に屈辱的な拷問を受けたことがきっかけという説もある。*1反政府運動の結果、政権が瓦解したとして、トルコのような国になるのか、イランのような国になるのか、親米・イスラエル融和路線が継承されるのかされないのか、見えない。そんなこともあってか...

28日の米国株式市場は大幅反落して終了した。エジプトで反政府デモが広がっていることを受けて、リスクの低い資産へ資金を移す動きが強まった。クリスティアナ・バンク・アンド・トラストのポートフォリオマネジャー、トーマス・ニューハイム氏は「市場は不透明要因、特に地政学的な不透明性を嫌う。週末に(エジプトをめぐる)不透明性がどうなるかによって来週の相場に影響が出る」と語った。

 米国は、というか、マネーは混乱を嫌うのだろう。エジプトの政権交代が、対イスラエル政策、ひいては中東のバランス・オブ・パワーにどう影響するのか、混乱はサウジに波及するのか、石油政策はどうなるのか、米国のテロ政策に影響を与えるのかどうか。見えないことが不安なのだろう。エネルギー問題に直結する話だし、とりあえず、売って、キャッシュポジションを高めておこうと判断するファンドマネジャーが多いのだろうな。
 米国政府も苦しい。独裁政権の民衆弾圧を表立った支持するわけにもいかず、といって、倒壊すれば、どんな政府ができるのか、わからない。米国に理解のある人物を次期政権の中心に持っていきたいのだろうが、下手に米国が支持すれば、その人物は傀儡として、かえって民衆の反発を買うかもしれないし、まだまだ続くかもしれないムバラク政権の反発を買うことになる。まあ、民衆の反感がムバラク政権を支持してきた米国にまで向くことがないように防戦するしかないのだろうな。
 今回のデモの結末がどうなるのか。結局は、チュニジアでそうだったように軍がどちらの側に立つかなのだろうなのか。ムバラクか民衆か。
倒壊する巨塔〈上〉―アルカイダと「9・11」への道 エジプトの政治経済改革 (アジ研選書) イスラーム政治と国民国家―エジプト・ヨルダンにおけるムスリム同胞団の戦略

*1:アルカイダの成立から911テロまどぉ追ったローレンス・ライト『倒壊する巨塔』に出てきた話 => http://t.co/4jiYf3t