英国が凍結を提案したムバラク海外資産400億〜700億ドル。エジプトにとって、どれだけの額かというと
ケーブル英ビジネス・改革・技術相は13日、400億〜700億ドル(3兆3千億〜5兆8千億円)ともいわれるエジプトのムバラク前大統領の海外資産を凍結するよう国際社会に協力を呼びかけた。スイスはすでに前大統領一族の銀行口座を凍結。前大統領が辞任までの18日間に海外資産を隠したと報じられており、英重大不正取締局(SFO)が調査を始めたもようだ。
英国がエジプトのムバラク前大統領の海外資産凍結を呼びかけている。ムバラクの資産というよりエジプトの資産という考えなのだろう。400億ドルから700億ドルというと、ものすごい金額だが、これがエジプトにって、どれだけの金額かというと...。
在エジプト日本大使館の「エジプト基礎情報〜経済」によると、国家予算は「歳入2786億エジプトポンド、歳出3477億エジプトポンド。財政赤字は692億エジプトポンド(08/09年:政府予算 贈与および純借入を含む)」。これを今日のレートで、ドル換算してみると、歳入473.73億ドル、歳出591.23億ドル、財政赤字117.67億ドル。ほぼ国家予算1年分に匹敵する金額。財政赤字で見れば、5年前後はムバラクさんの資産だけで穴埋めできるともいえる。
エジプトの対外債務残高は、JETROの資料によると、2009年度末で336.94億ドル、CIAの資料では、2010年末推定で306億ドル。ムバラクさんの海外資産だけで返済できてしまうわけ。同じくCIAのデータによると、2010年末推定のエジプト国内向け直接投資残高は724億ドル。極論すると、海外がエジプトに投資した金額がすっぽりムバラク大統領のポケットに行ったのと同じ計算になる。
この資産が適正にエジプトの国内の投資に回されれば、どれだけすごいか。海外の援助に頼らなくても、かなりの規模の投資が実現できることになる。いまはEUも米国も懐具合が厳しいから、ここは自分たちの税金を使うよりも、自分の国にあるかもしれないムバラク前大統領の資産を差し押さえて、エジプト国民に返したほうがいいと思っているんだろうか。道義的に正しいことであると同時に損得勘定から言っても、そちらのほうが得だと。それはともかく、これこそ埋蔵金。エジプトの成長投資に使うべきものであることは間違いない。
★在エジプト日本大使館「エジプト基礎情報〜経済」 => http://t.co/t7Jb4e0
★日本貿易振興機構(JETRO)「エジプト基礎データ・概況」 => http://t.co/D29ERfO
★米CIA「The World Factbook: Egypt」 => http://t.co/xADCZp9
★外務省「各国地域情勢・エジプト・アラブ共和国」 => http://t.co/h1QCnYs
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