野口武彦『幕末バトル・ロワイヤル 慶喜の捨て身』

慶喜の捨て身―幕末バトル・ロワイヤル (新潮新書)

慶喜の捨て身―幕末バトル・ロワイヤル (新潮新書)

 野口武彦の「幕末バトル・ロワイヤル」シリーズの第4作。高杉晋作長州藩クーデター(功山寺挙兵)から薩長密約、第2次長州戦争、大政奉還王政復古を経て、薩摩藩邸焼討まで。薩摩が暗躍する一方で、英国、フランスも裏で動く。こうした歴史を改めて読んでいくと、江戸時代官僚制が既に制度疲労を起こしていたということに気づく。旗本は徳川のエリート官僚群だったはずが、このころはもはや機能しないし、戦意もない。あるのはプライドだけ。これでは体制がもたないなあ。
 幕末モノは昔から日本で人気のあるジャンルだが、国勢が上り坂の時は、志士たちの熱気に共感し、国勢が下り坂になると、旗本や幕臣たちの迷走ぶりにいまの政治家、官僚、民僚(大企業の本社にいる官僚的なエリートたち)を重ねあわせてみてしまう。日本の良い面も、悪い面も噴出した時代だったのだな。
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