松藤民輔『超・投資勉強法』

超・投資勉強法──「動乱の時代」に金運を掴む人、掴めない人

超・投資勉強法──「動乱の時代」に金運を掴む人、掴めない人

 2009年2月の出版だから、リーマン・ショックの後の動乱期に書かれた本。だから、「はじめに」には「平時の投資法・勉強法では生き残れない」というサブタイトルが付いている。投資勉強法というのは、経済の読み方、マーケットの読み方の教科書でもある。特に今のように変動の激しい時代には、こうした本が刺激になる。読んでいても、面白かった。目次で内容をみると...

第1章 これまでの金融知識や投資法はもう通用しない
第2章 いまからが個人が底値で拾える千載一遇のチャンス
第3章 見えないトレンドを見抜く、松藤流10種の「透具」
第4章 蛇口の水一滴から黄金を掴む方法
第5章 投資力を鍛える−−3カ月間で3倍に殖やすゲーム

 で、最後に「投資に必ず役立つ松藤流金言集−−成功と幸運を掴む30カ条」が付いている。
 基本的に、勘と度胸の人ではなく、データと論理の人。問題はどのデータを、どういうロジックで評価するか。といって「PER」とか「PBR」とか「ROE」とかいった一般的な指標は相手にしない。そのあたりが面白い。この本で紹介されている、ある投資家が着目するのは「研究開発費」「金融収支」「平均年齢」だという。なるほどなあ、と思う。研究開発費は潜在成長力、記入収支は財務の健全性(不況抵抗力)、平均年齢の若さは成長性、収益性をみるバロメーターとなりうる。
 松藤氏自身が評価する指標は、第3章で紹介されている10の視点

1. ビッグピクチャー(金価格とニューヨーク・ダウを消費者物価指数で調整したチャート)
2. BDI(バルチック海運指数)
3. VIX(恐怖指数
4. GSR(ゴールド・シルバーレシオ)
5. RGP(リアル・ゴールド・プライス)
6. BKX(フィラデルフィアKBW銀行株指数)
7. DX(米ドル指数)
8. LIBORロンドン銀行間取引金利
9. 石油株指数
10. カナダドル指数

 知らなかったものを含めて面白いデータが並ぶ。松藤氏の「投資の鉄則は割安で買って割高で売るか、割高で打って割安で買い戻すか」。当たり前といえば当たり前だが、問題はタイミングということらしい。基本的にデータを読み込んで、安い時(あるいは高い時)に仕込んで待つという手法。だから、この本が書かれたリーマン・ショック後の暴落期は仕込みの好機ということになる。
 暴落時は普通の人は怖いんだけど、ウォーレン・バフェットにしても資産家というのは、暴落時に仕込むのが特徴なのもしれない。最後の金言集に「相場は悲観の中で生まれ、懐疑とともに育ち、楽観の中で天井を打ち、幸福感とともに消える」という相場の格言が紹介されている。と同時に、この仕込み型の投資は、早くても、遅くてもダメで「結果はすべたタイミングで決まる」という。
 最後に投資力を鍛える勉強法としては、①学ぶ、②真似る、③待つの「3M」をあげている。最後の「待つ」は、金言集の「買う、売る、そして待つ」につながる。