伊集院静『潮流』
- 作者: 伊集院静
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/01/15
- メディア: 文庫
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さしのべた手にこそ葡萄の房は落ちてくる―。大手化粧品会社のCMを作る健一は、紆余曲折を経て無名の18歳・唯子をキャンペーンに起用。花を食べる鳥を夢見る彼女は国民的人気を博していく。一年半後に再会した二人は…。無頼派クリエイターと純心無垢なスターの揺れる愛を描いた、伊集院静の伝説的名作。
カネボウ化粧品の伝説的なCM、クッキーフェイスでの出会いから一緒になるまでが私小説として描かれる。最後は、逗子なぎさホテルで終わるのだが(この小説ではホテル名は出てこないが)、このあたりの記述は先日読んだ「なぎさホテル」と同じ部分がある。作者の実人生に題材をとった私小説と言っていいと思うのだが、ヒロインが夏目雅子だと思うと、どうしても、そちらに関心が行ってしまう。どこまでが事実で、どこまでが虚構か。虚構を通じて真実を描こうとしているのか。
読み終わった後の感想で言うと、書き急いでいる感じがした。『乳房』ほど凝縮されていないし、『なぎさホテル』ほど枯れてもいない。夏目雅子が亡くなったのが1985年で、『潮流』の出版は1993年。まだ長編として書くほどには感情が整理されていなかったのかもしれない。
【やぶしらず通信・関連ログ】
・伊集院静『なぎさホテル』(電子書籍)を読んで(4月25日)=> http://bit.ly/ffcAeg
・伊集院静『乳房』を読んで(5月1日) => http://bit.ly/loQ5zD