松本市壽編『良寛−−旅と人生』

 角川文庫の「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」シリーズの1冊。本来は原典をきっちりと読むべきなんだろうが、ちょっと弱気になって、「ビギナーズ」として良寛を読む。「良寛の生涯と詩歌」という短い評伝に続いて、良寛の代表的な短歌、俳句、漢詩が現代語訳と解説付きで収録されている。ちょっと古典の教科書か参考書みたいな感じ(漢詩も書いていたのだなあ。知らんかった)。古典は学校で勉強したものの、あまり詳しくないので、ちょっとお勉強。そうした僕みたいなビギナーの入口としては、こうしたシリーズは貴重。
 で、いくつか、印象に残った良寛の詩歌では...
 まず、文政11年(1828年)の三条大地震に際しての作品

 かにかくに とまらぬものは 涙なり 人の見る目も しのぶばかりに
 うちつけに 死なば死なずして 永らへて かかる憂き目に 見るがわびしさ

 日本は地震に泣いてきた国だと改めて思う。その悲しさはいつの世も変わらない。
 三条大地震とは別に、知人の子どもの死を悲しんで贈った歌

 もみぢ葉の 過ぎしに子らが こと思へば 欲りするものは 世の中になし
 大丈夫(ますらを)や 伴泣きせじと 思へども 烟見る時 咽せ反りつつ

 こんな句も詠んでいたのかと思ったのは

 新池や 蛙とびこむ 音もなし

 芭蕉のパロディみたいだけど、解釈としては、オマージュらしい。ほかに、こんな句も

 柿もぎの 金玉寒し 秋の風

 寒さがわかるが、小学生男子が喜びそうな一句(自分も小学男子の感性かも)。
 最後に辞世の歌。

 形見とて 何残すらむ 春は花 夏ほととぎす 秋はもみじ葉

 良寛らしい。