長谷川幸洋『官邸敗北』

官邸敗北

官邸敗北

 昨年5月、参院選での民主党惨敗前に出版されたものなのだが、1年前が遠い昔のように思われる。政権交代で、日本の政治が変わることを期待されながら、鳩山政権のドーナツ化、小沢一郎との権力の二重構造、そして財務省を中心とした官の大反撃の前に、政治主導をうたった官邸が落城していく様を描く。悲しいのは政権が変わった今も、その状況が変わっていないこと。菅首相自身、この物語のメーンキャストだったのだから、流れが変わらなくても仕方がない。こうした官邸敗北にあたってのメディアの役割にも言及している。このあたりは「政治ジャーナリズムの罪と罰」の最新版といった形。ともあれ、読んでいて、吐き気がするくらい絶望的になる本。マックス・ウェーバーがいうように、こうした絶望的状況でも諦めないのが政治家なんだろうけど。
職業としての政治 (岩波文庫) 政治ジャーナリズムの罪と罰 (新潮文庫)