誰がため

誰がため [DVD]

誰がため [DVD]

 デンマークの反ナチス抵抗運動を描いた映画。北欧・東欧の空のように重苦しい映画。主人公は暗殺者となった2人のレジスタンス。ナチス抵抗運動のための殺人を続けていくうちに、自分たちの殺人が大義に基づくものなのか、何のため、誰のために戦い、殺すのかも不透明になっていく。デンマークの中にもナチスに共感する人もいるし、占領下でも国内情勢は複雑。抵抗運動に名を借りて私服を肥やしたり、自分の不利益になる人を排除するために殺人の指令が出たりするようにもなっていく。自由・解放のための戦いだったはずが、単なる殺人の道具になっていってしまう。誰が信じられるのかもわからなくなってくる。その意味で極めて現代的な映画。そしてデンマーク、欧州の映画だから、ハリウッドのようなカタルシスはなく、空気は暗く、重苦しい。
 2人組の暗殺者の一人を演じていたのは、マッツ・ミケルセン。「カジノ・ロワイヤル」でル・シッフルを演じていた人で、あの映画では、どうして、こんなに暗いんだろうと思ったのだが、この映画では、その暗さが主人公にリアリティを与えている。この演技で、「カジノ・ロワイヤル」に抜擢されたのかと思ったら、順序が逆で、「カジノ」の次に出たのが「誰がため」だった。もうひとりの赤毛のフラメン(炎)役のトゥーレ・リントハートもカリスマ性のある個性的な若手俳優で、こちらは、このあと、トム・ハンクス主演の「天使と悪魔」に出るなど、出演作が増えている様子。それも、わかる。
 しかし、それにしても暗い映画だった。
『誰がため』オフィシャルホームページ => http://bit.ly/pPmpBi