WOWOWのアカデミー短編実写映画賞受賞作特選、ドイツの「おもちゃの王国」が出色だった

アカデミー賞で短編実写映画賞に輝いた秀作4本を、まとめて一挙にオンエア。ハリウッド志向の娯楽作もあれば、インディーズらしい個性的な作品もあるといった具合に、色とりどりの個性を楽しむことができる。(略)「ウエスト・バンク・ストーリー」パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区におけるユダヤ人とパレスチナ人の対立をミュージカル・コメディ仕立てでデフォルメ。「ピックポケット」しがないスリ2人組が、口がきけない少年の面倒をみることに。「おもちゃの国」1942年のドイツでユダヤ人が収容されることになり……。「ゴッド・オブ・ラブ」刺さった者が直後に見た相手と恋に落ちてしまう、不思議なダーツがもたらす愛の奇跡とは。

 アカデミー賞授賞式が近づいて様々な映画がテレビに流れているが、先日やっていたWOWOWのアカデミー短編実写映画賞特集は出色だった。2005年のアメリカ作品「ウエスト・バンク・ストーリー」、2006年のフランス作品「ピックポケット」、2007年のドイツ作品「おもちゃの国」、2010年のアメリカ作品「ゴッド・オブ・ラブ」ーーどれも短編小説のような味わいで、各国のお国ぶりも味わえる。米国系は、どちらかというと、コンセプト勝負。いかにもマーケティングの国。一方、フランスはエスプリ。「おもちゃ」と「ゴッド」はモノクロで、このあたりはこだわりだろう。
 で、出色は、ドイツの「おもちゃの国」。子ども同士が仲良くしていた隣のユダヤ人ピアノ教師の一家が収容所に送られることになる。出発の前夜、「友達はどこに行くの?」と子どもに聞かれた母親は本当のことは言えず、「おもちゃの国に行くのだ」と話す。それを聞いて「僕も一緒に行く」と言い出す子どもをなだめて寝かすが、翌朝起きると、子どもも隣のユダヤ人家族の姿もない。顔色を変えた母親は子どもを探して、ナチスユダヤ人を移送する駅へ向かうが...という筋立て。必要最小限に削ぎ落とされた描写と映像。緊迫感のある展開と意外なラスト。最後の最後まで余分な説明は一切ないが、それがかえって余韻を残す。長編映画や1時間ドラマにでもできるであろう内容を20分にもならない短編で全て語りつくすところがすごい。短編ならではの映画。見る前は、4本の中では期待していない1本だったのだが、見終わってみると、これがベストだった。
 この映画、YouTubeにあった。フルバージョンのようだが、ドイツ語なので台詞はわからないけど。
★「おもちゃの国」(原題:Spielzeugland)