いまや北欧を代表する輸出産業はVOLVOでもノキアでもない。犯罪小説なのだとか

 英エコノミストの最新号に、こんな記事があった...

BUSINESS in the Nordic countries has suffered a series of humiliations in recent years. Nokia is a shadow of its former self. Volvo has been passed from one foreign owner (Ford) to another (the Zhejiang Geely Holding Group), and Saab Automobile has collapsed. Iceland's banking industry has imploded. But in one business, at least, Scandinavia is sweeping all before it: the production of crime thrillers.

 北欧を代表するビジネスといえば、携帯電話のノキアであり、自動車のVOLVOボルボ)やSaabだったわけだが、Saabは経営破綻したし、ノキアにしてもVOLVOにしても苦しい。しかし、ひとつだけ好調なビジネスがあるーーそれは何か? 犯罪小説だ、という、お話。
 確かに、このところ、北欧の犯罪小説はグローバルな人気を得ている。エコノミストが紹介している小説家をリストアップすると、まずは、こちら...

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 ご存知、スウェーデンスティーグ・ラーソンのミレニアム・シリーズ。スウェーデンで映画化され、米国でも「ドラゴンタ・トゥーの女がリメイクされた。これが北欧犯罪小説人気爆発の起爆剤となった。
スティーグ・ラーソン - Wikipedia => http://bit.ly/OouWTt
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 続いては、こちら...
殺人者の顔 (創元推理文庫)

殺人者の顔 (創元推理文庫)

 同じくスウェーデンのヘニング・マンケル。
★ヘニング・マンケル - Wikipedia http://bit.ly/OovkBx
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 そして、ノルウェーからは...
コマドリの賭け 上 (ランダムハウス講談社文庫)

コマドリの賭け 上 (ランダムハウス講談社文庫)

 ジョー・ネスボ。邦訳はまだ出ていないようだが、注目はこちららしい。
The Snowman: Harry Hole 7

The Snowman: Harry Hole 7

 英語のタイトルが「ザ・スノウマン」。マーティン・スコセッシが映画化を計画しているという。
ジョー・ネスボ - Wikipedia => http://bit.ly/OowCwo
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 アイスランドは北欧(ノルディック)の括りで、そちらからも...
湿地 (Reykjavik Thriller)

湿地 (Reykjavik Thriller)

 アーナルデュル・インドリダソンはエーレンデュル警部シリーズで有名だという。
★アーナルデュル・インドリダソン => - wikipedia => http://bit.ly/RFOZQQ
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 そして再び、スウェーデンに戻って....
氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

 女性作家のカミラ・レックバリ。「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの著者。
★カミラ・レックバリ - Wikipedia => http://bit.ly/OoxuRr
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 で、こうした作家群の先駆者として、このコンビが入る。
笑う警官 (角川文庫 赤 520-2)

笑う警官 (角川文庫 赤 520-2)

 マイ・シューヴァルとペール・ヴァールーのマルティン・ベック・シリーズ。これが先駆者かも。こちらも「笑う警官」はハリウッドで映画化された。
★ペール・ヴァールー - Wikipedia => http://bit.ly/RFQi2j
マルティン・ベック - Wikipedia => http://bit.ly/RFQdvp
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 そしてテレビの犯罪ドラマでは、こちらが評判だという。
The Killing [DVD] [Import]

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 デンマークで大ヒットし、その人気は欧州に波及、さらには米国でもリメイクされた「THE KILLING/キリング」。日本では、CSのスーパー!ドラマTVが放映している。
★THE KILLING/キリング - Wikipedia http://bit.ly/RFRqD3
★THE KILLING/キリング - スーパー!ドラマTV => http://bit.ly/RFRu5M
 確かに小説に映画にテレビに、北欧生まれの犯罪スリラーがいまやグローバルに花盛り。ただ、北欧自体は治安は良く、10万人当たりの殺人事件発生件数で言うと、米国が4.2、ブラジル21に対して、デンマークは0.9だという(この数字を見ても、ブラジルは犯罪スリラーというより武闘派アクション映画の舞台だなあ)。現実には少ないんだけど、小説では殺人時代が横行しているらしい。で、世界から見れば、辺境の地、言語的にも少数派といえるところからグローバルな人気を誇る犯罪小説が生まれたということで、エコノミストは成功の要因をいろいろと分析している。
 そのうえで、激しさを増すグローバル競争の中で、出版界に次の波がやってくれば、オスロノルウェー)やイースタッド(スウェーデン)は忘れ去られ、パリやリヨンのフリック(刑事、デカ)の話を読んでいるかもね、と結んでいる。いまや犯罪小説の世界もノキアが戦うケータイ・ビジネスの世界と変わらないということかな。このあたりは経済誌らしい締めかもしれない。