「ハシシタ」問題で毀誉褒貶の嵐に見舞われている佐野眞一氏の本といえば...

 週刊朝日での「ハシシタ」連載中止で、毀誉褒貶の嵐に見舞われている佐野眞一氏(否定的な反応がほとんどだが...)、これまでの実績からいえば、日本を代表するノンフィクション・ライターのひとりといえる。で、どんな本があったかと改めてみてみると、まず、賞をとった作品でいうと、こちら...

旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三 (文春文庫)

旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三 (文春文庫)

 『旅する巨人』、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作です。そして...
甘粕正彦 乱心の曠野

甘粕正彦 乱心の曠野

 『甘粕正彦 乱心の曠野』、講談社ノンフィクション賞の受賞作。ノンフィクション分野のビッグタイトルを2つとっている作家なのだ。
 まあ、世の中の評価がどうこういうよりも、この作品は読んでいて、すごいと思った。
東電OL殺人事件 (新潮文庫)

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

 『東電OL殺人事件』。自分の足で取材した結果、近く再審で東京高検も無罪の意見書を出すといわれているマイナリ被告の冤罪論を主張していた。
 このほかにも、佐野氏の作品としては、正力松太郎を描いた大著『巨怪伝』とか、現在の出版状況のルポルタージュ『だれが「本」を殺すのか』とか数々の話題作があるが、でも、佐野氏の作品で個人的に最も好きなのは、こちらだった。
業界紙諸君! (ちくま文庫)

業界紙諸君! (ちくま文庫)

 『業界紙諸君』、業界紙を通じて日本社会を見る。これは面白かった。
 一方で、今回の「ハシシタ」にもつながる系譜として、こちらの流れがある。
あんぽん 孫正義伝

あんぽん 孫正義伝

 ダイエー中内功氏、ソフトバンク孫正義氏ーービジネス界の革命家たちの姿を描くのに、そのルーツにさかのぼり語っていくという系譜の作品群だが、正直言って、こちらは方法論としても表現としても、どうも違和感があって、あまり好きではなかった。そして、この路線の延長線上のノンフィクションとして橋下徹大阪市長の「ハシシタ」があり、一線を越えるところまで暴走してしまった。
 なぜ、あの形で記事が誌面に載ったのかは謎だなあ。週刊朝日はこれから今回の件の検証をするそうだが、編集部自体が、ルーツ路線で橋下市長を描いて欲しいとリクエストして、一緒に突っ走ってしまったのだろうか。そうでもないと理解できない。ただ、このルーツ路線を進み続ければ、いずれは今日の事態を引き起こすかもしれないという危惧はあった。「カリスマ」の雑誌連載中にも中内氏から訴訟が起きており、週刊朝日だって、それは知っていただろうから、橋下氏にケンカを吹っかけるつもりならば、法務と相談しながら(ディフェンスを固めて)記事を掲載するはずだけど、ノーガードで走ったのだろうか。まさかなあ。でも、連載第1回で全面降伏したということは...。
 今回の件、どれだけ批判されても仕方がないけれど、それでも個人的には、このルーツ路線じゃない佐野氏の作品は好きだなあ。
佐野眞一 - Wikipedia http://bit.ly/TE6deq
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★東電OL事件、高検も「元被告は無罪」の意見書 : 読売新聞 => http://bit.ly/TE6he8