レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』

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 欲望をエンジンとした大量生産・大量消費の資本主義に対抗する思想は20世紀の共産主義から21世紀の共有主義へと移ったのだろうか、と言いたくなってしまう本。モノを買って自分の所有物としなくても、本来、そのモノが提供するサービスだけ受けられればいいのではないかという当たり前のことにみんなが気づきだし、ハイパー消費からコラボ消費へと、社会の気分は移ってきているという。そして、そうしたシェアする世界を、これまでのような「運動」としてではなく、気楽に、快適に実現できる環境がインターネットとモバイルによって可能になってきた。そんな動きを具体的なサービスの紹介によってレポートしていく。
 米国の本の特徴は、「論」として展開するだけでなく、それを具体的なケースを通じて語っていくこと。この本の中でも、いくつものサービスが紹介されていて、参考になる。カーシェアリングなどは日本でも広がっていて、すぐにイメージできるのだが、それ以外にも様々なサービスが出てきていることに気づく。また、そうした動きを取り込もうとして実験的なプロジェクトに取り組んでいる大企業もある。ともかく面白い。消費よりも共有という流れの背景には、リーマン・ショック以後の不況による生活難もあるのだろうが、「清貧の思想」などと気張らずに、「貧にして楽しむ」といった軽い感覚で、面白いサービスを生み出されていっている感じがする。事例が面白くて、さくっと読めてしまった。
 ちなみに、目次で内容を紹介すると...

・イントロダクションーー私のものはあなたのもの
パート1 新しいシェアが生まれるまで
 第1章 もうたくさんだ
 第2章 ハイパー消費の時代
 第3章 「私」世代から「みんな」世代へ
パート2 グランズウェル
 第4章 コラボ消費の登場
 第5章 所有よりもすばらしいーープロダクト=サービス・システム
 第6章 因果応報ーー再分配市場
 第7章 みんな一緒ーーコラボ的ライフスタイル
パート3 何が起こるか?
 第8章 コラボ・デザイン
 第9章 コミュニティはブランドだ
 第10章 シェアの進化

 最後に小林弘人氏の「日本語版解説」が付いている。
 次々と新しいビジネスが登場しているのも面白いが、共有社会のインフラとしてネットが利用されるなってくると、ネット上での信用が大切になってくる。ネット上で信頼されないと、その影響が実社会にも影響してくる世の中ともいえるかもしれない。ネット上で、お友達をつくる力というか、人格が大切な時代になっていくんだなあ。
★僕はKindleで読んだが、書籍版はこちら。

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  • 作者: レイチェル・ボッツマン,ルー・ロジャース,小林弘人,関美和
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2010/12/16
  • メディア: ハードカバー
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