村田晃嗣『レーガン−−いかにして「アメリカの偶像」になったか』

 第2次・安倍政権の誕生を見ているうちに、何となく思い出した米国大統領。知っているようで、知らないんで、この本を読んでみた。新書なので、コンパクトにレーガンの一生を知ることができ、面白い。その一方で、もっと詳しく政治、経済、社会に与えた影響を知りたくなる。そして今の日本と比較して思うのは、「楽観」というものが政治、経済、社会にどのような効果をもたらすかということ。レーガン時代にも当然、光と影があるのだが、それでも、未来に対する楽観主義が沈滞した国家にエネルギーをもたらしことは事実。そのエネルギーが放埒や強欲や堕落にもつながったりもするのだが、功罪含めて、この楽観をもたらすものをもっと詳しく知りたくなった。この本はレーガン時代を概観するのは最適ではあった。
 目次で内容を紹介すると...

第1章 マーク・トウェインの世界
第2章 「心の劇場」から「夢の工場」へ
第3章 レーガン都へ行く
第4章 政治教育
第5章 ホワイトハウスへの道
第6章 「小さな政府」と「強いアメリカ」
第7章 「アメリカの朝」−−醜聞と頂上会談の渦中で
終 章 レーガンの遺産

 ハリウッドの俳優上がりということで、どこかバカにされがちだが、政治家として残した影響は大きい。ルーズベルト大統領がニューディールでリベルな時代を築いたとしたら、レーガン大統領は現在の米国の保守主義の源流にあるのだなあ。ただ、今の保守主義者よりも、もっと柔軟な現実主義者だったところがブッシュ・ジュニアなどと違うところかもしれない。安倍首相も今のところ、保守急進主義というよりも柔軟な現実主義者の顔を見せているが、今後はどうなのだろう。