サッチャーの時代を知るのに良い映画−−「リトル・ダンサー」

 「鉄の女」といわれたサッチャーは激しい性格の人だったが、それだけに毀誉褒貶も激しかった。日本のメディアは、亡くなってしまえば、みんな良い人になってしまいがちだし、米国はレーガンとともにアイドルだったので、基本的に礼賛口調だが、母国・英国をはじめ、欧州では、時が過ぎても、そこまで割り切れるわけではなく、テレビニュースを見ていても、「好きか、嫌いか、はっきり分かれた人だった」と報じているし、英国の街頭インタビューでもいまだに嫌っている人が出てきたりする。
 で、そんなサッチャーの時代を知るのに良い映画として、思い出すのは、こちら...

リトル・ダンサー コレクターズ・エディション [DVD]

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 「リトル・ダンサー」。サッチャーは炭鉱労働者と対立し、労組は長期ストを打ったのだが、そんな炭鉱町を舞台にした映画で、当時の閉塞した英国の状況と、労使(労・政だろうか)対立の激しさを伺わせる。結果、父の炭鉱労組は敗北し、一方で、息子はダンサーとして自由の世界に旅立つ。英国が得たものと失ったものが描かれる。基本的にはハッピーエンドであり、英国が活性化したことは確かなのだろうが、その一方で、敗北した人々もいたということで、みんながみんな、楽しい思い出を持っていたわけではなく、痛みや苦味があることを教えてくれる映画でもある。だから、サッチャーに対して英国を没落から救ってくれたことは頭で理解しても、その後のシティ(金融街)の金ピカ主義を含め、複雑な心境になるのだろうなあ、と思う次第です。
 サッチャー後の英国を舞台にした映画では、こちらも印象的だった。
トレインスポッティング [DVD]

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 ダニー・ボイル監督の「トレインスポッティング」。スコットランドの地方都市の沈滞ぶりと、ロンドンのバブリーな感じが対照的だった。格差社会ですね。
 しかし、メディアを見ていると、サッチャー礼賛がほとんどだが(確かに、英国復権の立役者だったけど)、小泉政権格差社会の元凶と非難していた人たちからすると、サッチャーなどは、比べ物にならないぐらい自由競争主義の人だったけど、みんな、どう思っているのだろう。さらに平和主義者の人たちからすれば、アルゼンチンと戦争をした人だけど。こういう人たちの声はあまり聞こえてこないような気がする。
 そういえば、昔、こんな本があった。 サッチャーにかなり批判的な内容だったと思うけど...。
サッチャー氏を許すことはできない 英鉱山労働者、怒り今も - Bloomberg