イスラム国、日本人人質ひとりを殺害?。今度はヨルダンで拘束されている女性死刑囚との交換を要求

イスラム過激派組織「イスラム国」に関連するサイトに24日、同組織が拘束したとする後藤健二さんとみられる画像が投稿された。画像には後藤さんとみられる男性が映っており、同じく拘束された湯川遥菜さんとみられる男性の映った写真を持っており、音声メッセージは湯川さんが首を切断されたと述べている。24日に公開されて画像と音声では、身代金の要求は取り下げられたようで、ヨルダンで拘束されている女性死刑囚の釈放を要求している。

 日本人ふたりを人質にしていたイスラム国。ひとりを殺害した写真をジャーナリストの人質に持たせた映像を流す。これまでの身代金の要求から変わって、今度はヨルダンで死刑判決を受けている自爆テロリストとの交換(釈放)を要求する。ヨルダンにしても多数の犠牲者を出した事件の共犯であるテロリストを釈放など簡単にはできないだろう。釈放するならば、ヨルダン人の捕虜との交換に使いたいだろうし、日本人のための交換要員に死刑囚を頂戴とは政府も言い出しにくいだろうなあ。
民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1) しかし、今回の事件、イスラム国にすれば、人質解放を政府に迫る世論が盛り上がると思ったのかもしれないけど、不思議なほど人質に対する同情の声がうねりにならない。「民間軍事会社」を名乗る人が自分の意思で戦地のシリアに行って、イスラム国と戦う陣営に身を置き、その結果、捕まったといったところで、それは覚悟の上の話では...、という気分になってしまう。その人を助けに現地ガイドの制止も聞かずに入っていたジャーナリストにしても、リスクを承知のうえでの行動と思うと、素直に感情移入できなくなってしまう。これが医療関係者であったり、難民救済のNPOであったりしたら、心情も変わってくるが、「軍人」と「記者」だと、かわいそうだけど、危険は承知の上でしょ、というムードになってしまう。既にイラク、シリアでは民間軍事業者もジャーナリストもイスラム国に殺害されていたわけだから...。捕まったのは本当にかわいそうだけど...。
 どのような事情があったにせよ、日本国民の生命を守るため政府が全力で救出に努めることは当然だが、だからといってテロリストに大金を渡したり、下手に取引してはならないということは日本でもコンセンサスになってきているような感じがする(過去には「超法規的」といって取引したことがあるわけだが、今度の事件が新しい常識をつくるのかもしれない)。
 テレビは旧来型のセンチメンタル・センセーショナリズムで人質の方々に同情的な報道をしているが、それに世論がついてこない。民間軍事会社では....。ネットでは「自己責任論」が出ているみたいだし、政府の義務と責任を主張したいようにみえるメディアと世論の間にはどうもギャップがあるようにみえる。このあたりの時代の空気を知っているのは安倍政権なのかもしれない。政府は努力するにしても、焦る必要はないと。社会の支持は自分たちにあると...。しかし、そうなると、これから、どうなるんだろう。

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