ナベツネ、恐るべし。日経紙上で、さりげなく販促

 読売新聞のドン、ナベツネこと、渡辺恒雄氏が日経に連載している「私の履歴書」は、自慢話系だなと思いつつも、政界裏模様も満載で面白いが、今日は論説委員の話。窓際族といってもよかった論説委員室をいかに活性化し、自由気ままに書かれていた社説を社論として統一し、社説に一貫性を持たせたか。自由作文から論説への転換というわけで、なるほどと思う。

 論説委員会規定に「論説委員長は、主筆の意を体し、委員会を統裁する」とある。統裁とは調整することではなく決断することだ。

 なるほど、なるほどぉ。新聞として正しいあり方と思う一方で、読売新聞の主筆は渡辺氏。ということは、読売の社説はナベツネの意見でもあるし、それが“社内の法律”ともいえる規定の上でも確立されているわけだ。渡辺氏の意を体していない人は“法律”違反になってしまうんだ。すごいなあ。問題は運用のほうだなあ。
 論説の窓際的印象を払拭するために、若手の登用、論説委員を編集局の部長に据える人事をしたという。その結果・・・

政治、経済、社会の各部長は原則として論説委員経験者だ。

 社説を書くことができる筆力と見識を持った人を部長にするのは素晴らしいと思うと同時に、ナベツネの「意を体した」社説を書く人たちが登用されていくシステムにもみえる。この二面性がすごいなあ。
 で、今日の「私の履歴書」は締めにうなってしまった。論説改革の結果、「読売の社説は朝日のそれと際だった違いを見せ始める」としたうえで、

 中公新書ラクレから出ている『読売vs朝日』の社説対決シリーズをご一読願いたい。

 参考文献まで掲げるのはさすがインテリ・ナベツネと思ったけど、でも中公って、いまは読売新聞グループでは・・・。朝日と日経は読者層が近く、併読率が高いというのが通説だけど、その日経で、読売の社説がいかに朝日より優れているかと宣伝した上で、最後に読売グループの書籍の売り込みまでしてしまう。う〜ん。ナベツネの商才、恐るべし。