オバマは情報技術でマケインを圧倒した?

 Newsweek日本版が最新号(2008年11月19日号)の特集「アメリカが変わる」で、オバマ対マケインで戦われた米大統領選の詳細な(ニュージャーナリズム的な)レポートを載せている。総力特集といった感じ。2006年にオバマが大統領選への出馬を誘われるところから始まり、11月4日の当選にいたるまで、オバマ、ヒラリー、マケインそれぞれの陣営の様子が描かれている。これを読むと、大統領選の出馬前から、ケネディと親しかった人びとがオバマの演説にケネディの姿を見ていたことがわかる(理想主義を掲げてJFKと同じく暗殺に倒れたロバート・ケネディであったりもするのだが)。また、このレポートの限りでは、ヒラリーも、マケインも優れた資質を持ちながら、最高指導者としての決断力、指導力には欠けていたようだ。負ける組織はいつもそうなのかもしれないが、強力な指導力がないと、組織は内ゲバに陥ってしまい、自滅していく。
 それと、もうひとつの特徴は、オバマ陣営は、情報テクノロジーを駆使したこと。選挙チームには、ニューメディア部門があり、草の根選挙運動を円滑に進めるためのiPhone用ツールを開発して無料で配ったり、支持者の携帯電話番号確保でも先行していた。また、支持者リストと投票所に来た人のリストを突き合わせて投票していない支持者をスクリーニングするシステムをつくり、3時間おきにリストを更新、さらには、投票していない人に声をかけるボランティアに最新情報をリアルタイムで流すシステムまで開発したという。こんな話も紹介されている。

 大型のハリケーン「グスタフ」がテキサス州沿岸に接近していたときのこと。オバマ選対から赤十字に連絡が入った。赤十字のホームページを経由して救助の寄付を支持者に呼びかけるので、サーバーがパンクしないように準備して欲しいというのだ。赤十字側は「大丈夫。9・11テロも経験しているし、対応できます」と答えた。それから15分弱。オバマ支持者の殺到で、赤十字のサーバーはパンクした。

 圧倒的な動員力だったんだなあ。オバマの選挙戦は選挙の方法を変えてしまうかもしれない。それだけではなくて、企業のマーケティングをも変えてしまうかもしれないけど。いかに、インターネット、モバイルを使うか。特にモバイルの方かもしれない。固定電話ではなくて、いかに携帯電話にうまくアプローチするのか。
 さらに興味深かったのは、オバマ、マケイン両陣営ともに、サーバーが攻撃を受け、データを盗まれる事件が起きていたこと。これは外国勢力によるものだという。中国かロシアだろうと推測されている。
【参考】
Newsweek 日本版
 http://nwj-web.jp/