関口安義「芥川龍之介」

芥川龍之介 (岩波新書)

芥川龍之介 (岩波新書)

 芥川龍之介の評伝。芥川というと、古典に素材をとった技巧的な作家というイメージを持っていたのだが、この本を読んでイメージが変わった。古典を題材に、現実の苦悩を文学に昇華させていたんだなあ。実母は精神を病み、養子に出され、初恋の人との結婚は否定され、愛人との関係、義兄は自殺し、文壇では若くして成功した嫉妬もあり攻撃される。不眠症に悩み、心身ともに、ぼろぼろになっていく。自滅的な人間というより、むしろ環境に追い詰められていった感じがする。読んでいくと、自殺に至ったのもわかる。芥川の作品は、中学・高校時代に読んだが、改めて読み返してみたくなる。