ポール・オースター「幻影の書」

幻影の書

幻影の書

 事故で妻と子を失い、絶望に沈んでいた主人公を救ってくれた無声映画。映画の主役は突然、映画界から姿を消した伝説の人物。その忘れらたスターの映画論を書いたところ、本人から連絡が来て・・・。オースターはストリーテリングの名手。次から次へと物語が紡がれていく。オースターの映画「スモーク」も、「ブルー・イン・ザ・フェイス」も好きだけど、映画の世界が好きな人なんだなあ。この本の主題は喪失と救済。人生は不可解。でも、出会いによって救済されていくのか。それでも、生きていくのが人間ということなのかなあ。ともあれ、映画と同じように、登場人物の独白に引きこまれていく。