10月26日で、
安重根による
伊藤博文暗殺から100年。ということで、何となくタイトルに惹かれて、読み出したのだが、これが面白かった。暗殺を軸に、
伊藤博文と清国・朝鮮外交を論じた本。幕末・
明治維新から
征韓論、
日清戦争、
日露戦争、
日韓併合、
閔妃暗殺、それぞれ個別には読んでいるのだが、一つの流れとして日本と
朝鮮半島の関係を辿ったことはなかった。
陸奥も小村も児玉も中国支配を目指す謀略家になってしまう。上垣外氏の描く文脈で辿ると、
伊藤博文はもちろん、
陸奥宗光、
小村寿太郎、
児玉源太郎、
明石元二郎などの印象も変わってくる。外交と軍(武力・戦争)との対立が見えてくる。伊藤が
プロイセンの
ビスマルクの影響を受け、外交を志向しながらも、戦争という手段をも飲み込んでいたという指摘も面白い。そうした目で見ると、伊藤の行動と悲劇が見えてくる。歴史は皮肉なもので、韓国を愛しながらも、韓国人民を弾圧する役回りとなり、
日韓併合に反対しながら、暗殺されてしまう。伊藤の暗殺後、一気に
日韓併合が進んでしまう。この本では、伊藤暗殺を暗殺したのが実は明石ら軍部だったのではないかという説を展開するが、それも一連の流れで見てくると、納得できる仮説となる。
もうひとつ感じるのは外交の残酷さ。日露開戦とともに日本は朝鮮を占領するが、ここで米国と密約を結ぶ。
米西戦争で米国はフィリピンを
支配下に置いたばかり。日本はフィリピンを脅威を与えるような南進をしない代わりに、米国は日本の朝鮮支配を認める。そうした密約があるのも知らず、朝鮮は米国に日本支配の不法性を訴えに行くのだが、米国は相手にしない。悲劇だなあ。まさに弱肉強食の時代だった。今でも外交の世界はそうしたものかもしれないけど。