菊池夏樹「菊池寛急逝の夜」

菊池寛急逝の夜

菊池寛急逝の夜

 菊池寛は文学者にして、文藝春秋社の創業者。テレビ化されて人気を呼んだ「真珠夫人」で再評価の動きがあったものの、作家、文豪というよりも、大衆小説家、エンターテイナーという印象を持っていた。その菊池寛の最後の日々を肉親(孫)が描く。やはり作家としてよりもプロデューサーとしての才能のほうが勝っているように思える。女性関係から家出した夫人に戻ってきてもらうのに全快祝いを企画し、その最中に倒れて、帰らぬ人になったというのも、最後まで「企画」の人で、企画に殉じてしまったのかもしれない。葬儀の様子も再現されるが、弔辞を読んだのが、舟橋聖一里見紝石川達三川端康成吉川英治林芙美子と、顔ぶれがすごい。菊池はかなり変わった人のようで、美味しい料理となると、食べては吐いて、また食べてという人だったという。美食を追求するために、料理を食べては吐き、吐いては食べ食べるという宴席が中国にあることは聞いたことがあったが、日本で実践している人がいるとは思わなかった。