ジョン・B・テイラー「脱線FRB」

脱線FRB

脱線FRB

 タイトルを見ると、何だか爆笑ギャグ本みたいな感じだが、内容は、今回の金融危機に対するFRB、米財務省などの金融政策を検証した真面目な本。著者は「テイラー・ルール」を作り出した人で、本書もテイラー・ルールをもとに欧米の住宅バブルを生むに至った金融緩和政策の問題を指摘する。と同時に、バブル崩壊後の政策についても批判する。基本的に、オカネの流れをとめたのは「カウンターパーティ・リスク」であって「流動性リスク」ではなく、後者を主眼とした対策はあまり効果がなかったと断じる。むしろ、前者の対策をもっと明確に打ち出すべきだったと。それはその通りと思いつつ、「カウンターパーティ・リスク」と「流動性リスク」の切り分けは結構、難しいのではないかと思った。相手先金融機関の「流動性リスク」が「カウンターパーティ・リスク」であったりするんで、「流動性リスク」対策が引いては「カウンターパーティ・リスク」対策になったりすることも。とはいえ、現在進行形の経済問題に、いろいろなモノサシをあてて問題点を摘出し、それを政策に生かそうとするのは経済学の本来の意義であるわけで、この時期に、こうした本が出てくることは、さすが米国。しかし、タイトルは、ちょっとなあ。