先進国ではシニアとなった団塊が若者を搾取し、中東・北アフリカでは高齢の独裁者が若者を搾取する

チュニジアやエジプトでは、若者が高齢の支配者たちに反旗を翻している。英国では、若者が大学授業料の引き上げに反発し、抗議行動を起こしている。彼らに共通するものは一体何だろうか? 彼らは、影響の出方こそ違うが実は同じ現象に苦しめられている。英国の高等教育担当大臣であるデビッド・ウィレッツ氏が昨年出版した著作で「ピンチ」と形容した状況だ。

 JBプレスが翻訳したフィナンシャル・タイムズ(FT)の「世界の若者が反抗的な気分な理由」の冒頭部分。デビッド・ウィレッツ氏の『ピンチ(The Pinch)』は副題に「How the Baby Boomers Took Their Children's Future - And Why They Should Give it Back」とある。訳すと「ベビーブーマーは子供たちの未来をどのように奪ったか――そして、なぜ子供たちに返すべきか」ということだろうか。1945〜65年に生まれたベビーブーマー、日本でいうと、その中心は団塊の世代ということになるのだろうが、高齢化した、この世代がいまや国民(有権者)の多数派となって国政の行方を左右し、経済や社会の仕組みを自分たち用にカスタマイズした。そして自分たちの既得権益謳歌するようになったことが結果として、子どもたちの未来を奪うことになってしまっていることを指摘した本らしい(読んでいないので、紹介を読むと、そんな感じ)。
 FTの記事の主張では、先進国では高齢者が有権者の多数派となった結果、年金など高齢者福祉は削りにくいが、大学の授業料など若者たちのサービスは落とすことはやりやすい。財政難の問題にしても高齢者の既得権益を考えると、削るものも削れない。高齢層優遇の政策が若者たちをスポイルする。一方、エジプトもチュニジアもそうだったが、若者の人口が急増している地域では、非効率で腐敗した独裁政権は、必要な雇用を若者たちに提供できず、その結果、若者たちの不満が臨界点を超えた。
 ということで、簡略化すると、先進・民主主義国では、有権者の多数派となった高齢層が若者を搾取し、新興・独裁国家では、独裁者が若者を搾取する。世界の若者が反抗的な気分になるのは理由があるというわけ。この問題は日本も同じだなあ。ただ、日本の場合、若者の反抗は政治行動として表現されるのではなく、ときおり犯罪として暴発するようにみえる。
 1960〜70年代に「若者たちの反抗」を叫んだ団塊層が、無意識のうちに若者を搾取する。何とも皮肉な世界になってしまった。ウィレッツの本をきちんと読んでみたいが、訳はないのだろうか。原書で読むのは、ちとしんどいなあ。

Pinch: How the Baby Boomers Took Their Children's Future - And Why They Should Give It Back

Pinch: How the Baby Boomers Took Their Children's Future - And Why They Should Give It Back

The Pinch: How the Baby Boomers Took Their Children's Future - And Why They Should Give It Back

The Pinch: How the Baby Boomers Took Their Children's Future - And Why They Should Give It Back