福島原発事故、東電が半径30キロ圏内の住民に総額500億円の仮払補償金。あの悪評さくさくの公募資金を使うんだろうか

東京電力清水正孝社長は15日の記者会見で、福島第1原子力発電所の半径30キロ圏内の住民を対象に、1世帯当たり100万円(単身世帯は75万円)の仮払補償金を支払うと発表した。対象は約5万世帯で総額は約500億円。

 周辺住民の生活に甚大な影響を与えている福島第一原発事故。まずは1世帯当たり100万円、単身世帯75万円、総額で約500億円の補償金を仮払いするという。まずは最初の一歩。農漁業や産業の損害もあるし、計画避難地域の人たちの生活にも今後、影響を与えていく。最終的に、どのぐらいの損害になるのだろう。国と一緒に補償していくことになるのだろうが、記者会見などを見ていると、既に国、東電ともに、どちらがどのくらいの負担をするのか、駆け引きが始まっている感じもする。問題は、この事故がまだ現在進行形で、どのぐらいの影響を後に残すのか、まだ計算もできないことだろう。原発事故関連でも、新たな情報が出てくるし、まだ全容を把握できているようにも見えない。
 で、東電、日本の社会、経済に甚大な影響を与えているが、昨年秋には、マーケットを破壊し、既存株主の資産価値を毀損すると悪評さくさくの公募増資を強行していた。当初は最大5549億円を目指し、最終的に第三者割当増資分を含めて4469億円を調達した、この巨額増資によって一株当たりの価値は希薄化、それまで2400円前後で動いてた株価は2000円前後に低迷することとなった。株主無視の増資と批判されたわけだが、今度の事故で株価は崩れ去り、いまは旧額面の500円を下回る水準で乱高下する仕手株状態。2010年10月19日払込の新株払込金額は1767円。3月11日までに売った人は救われたが、週明け3月14日以降は一度も、払込金額を上回ることはなく、半年で3分の1以下になってしまった。この公募増資の主幹事の野村證券が第3社割り当ての引受先だったが、株主無視の増資を手伝った罰を受けたような気もする。2010年度の東電は、あやゆるステークホルダーに損害を与えたんだなあ。
 この調達資金の使い道。東洋経済オンラインの記事では、こんな感じ。

会社が増資の発表時に示した資金使途としては、2700億円を14年3月期末までに電源の効率化を含む低炭素化に向けた国内の設備投資に、残額を同じく14年3月期末までに成長事業の拡大への投融資資金に充当する、というもの。▼具体的には、前者についてはすでに予定している東通原子力発電所1号機(青森)の建設費等に2200億円、川崎火力発電所2号系列で熱効率の高い最新鋭火力発電設備を導入するために500億円を充てる予定だ。また、海外への投資については、米国サウステキサスプロジェクト原子力発電所3・4号機プロジェクトへの参画資金、豪州ウィートストーンLNGプロジェクトへの参画資金などを挙げている。

 思い切っり原発資金。このころは「原発ルネッサンス」に燃えていた季節だったからか。今となると、この資金は原発事故の補償と何年続くかわからない原子炉の後始末に使われていくんだろうか。
【参考】
・政府、東電に速やかな仮払金の支払いを要請 | 日テレNEWS24 => http://t.co/PCMzbZY
・福島第一被災者への賠償、国が1200億拠出へ : 読売新聞 => http://t.co/gb9zEvy
原発事故の賠償「住民のほか農林水産や中小企業にも」 経産相日本経済新聞 => http://t.co/d4Ke98A
東京電力:新株発行及び株式売出しに関するお知らせ(2010年9月29日)=> http://t.co/RrgiD10
東京電力:発行価格と売出価格等の決定に関するお知らせ(2010年10月12日)=> http://t.co/SEr9mym

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