マイレージ、マイライフ
- 出版社/メーカー: 角川映画
- 発売日: 2010/08/27
- メディア: DVD
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原題は「Up in the Air」。主人公はリストラの解雇通告を代行する人事コンサルタントで、全米を飛行機で飛び回る、空港こそ我が家というような男。冒頭のタイトルバックで、大恐慌時代に米国を放浪した国民的歌手、ウディ・ガスリーの名曲「わが祖国」(This Land is Your Land)を現代風にカバーした歌をバックに、空撮した米国の都市の映像が次々と流れる。その風景が美しい。一方で映画の中では、それと対照的なリストラによって空席ばかりとなった殺伐としたオフィスが登場したりする。大恐慌時代とリーマン・ショック後の大不況が重なり合う感じがする。
最初から最後までジョージ・クルーニーが素晴らしく、クルーニーを取り巻く2人の女性、出張族のキャリアウーマン役のヴェラ・ファミーガとリストラ会社の新人役のアナ・ケンドリックがこれまた良い。ナショナル・ボード・オブ・レビューではクルーニーが主演男優賞、ケンドリックが助演女優賞をとり、クルーニーはニューヨーク映画批評家協会でも主演男優賞をとった。アカデミー賞には3人ともノミネートされたが、主演男優賞は「クレイジー・ハート」のジェフ・ブリッジス、助演女優賞は「プレシャス」のモニークだった。相手が悪かったかも。
この映画、ジェイソン・ライトマンとシェルドン・ターナーの脚本がともかく良く出来ている。アカデミー賞では、「プレシャス」に賞を奪われたが、ゴールデングローブ賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞をとっている。このあたりも納得。やっぱり、映画は本。現代の人間と社会を描いている。そして、やっぱり男って子どもなんだなあ、と思わせる映画。クルーニーが世間知らずの新人のケンドリックに、「子どもみたいじゃない」と言われる場面があるのだが、最後になると、その言葉は当たっているのかなあ、と思ってしまう。
映画を見終わってみると、原題の「Up in the Air」には含蓄があることがわかる。「英辞郎」でみると、この意味には「上空に」のほか、「宙に浮いて、未定で、未決定で、未解決で、漠然とした、はっきりしていない」と「有頂天になって、とても幸せな、興奮して、怒って」がある*1。その全てが、この映画がクルーニーが演じている男の姿だ。
*1:「up in the air」検索結果・英辞郎 on the WEB => http://t.co/Vxwr6ep