今日が誕生日のコーネリアス・ライアンの作品といえば、やはり第2次大戦3部作。中でも「遙かなる橋」
今日6月5日が誕生日の人をウィキペディアで見ていたら、コーネリアス・ライアンの名前があった。第2次世界大戦、特にヨーロッパ戦線の戦史モノで知られるノンフィクション作家。最も有名な作品はこちらだろう。
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ノルマンディー上陸作戦の後、空挺部隊の出番がなくなるのだが、将軍たちは戦争が終わる前に軍功を上げたいと思い、大空挺作戦を計画、もう戦争に勝った気分の将兵たちも盛り上がる。これに対して、ある情報将校が空挺部隊の降下計画地点に、作戦上は存在しないはずのドイツ軍が結集していることを察知し、自ら偵察機に乗って確認し、作戦の中止を進言するのだが、司令部は無視した上に、この将校に休暇を採らせる。みんな盛り上がっているのに、水を差すな、和を乱すな、というわけだ。このあたり、組織というのは、どこの国も変わらないのだなあ。威勢のいい意見が跋扈し、異議を唱える者は敗北主義と排除される。
結局のところ、ドイツ軍を過小評価し、作戦地のオランダの地形もよく考えないままに、暴走した連合軍は大敗を喫するのだが、最も危険な地域に投入されるのは自由ポーランド軍だったりする。連合軍内での政治的な地位によって、弱小国が貧乏くじをひかされる。「バカな指揮官は敵よりも怖い」という言葉があるが、それを地で行ったような物語。「遙かなる橋」も映画にもなったが、こうした組織の問題、政治の問題は映画になじまないのか、それほど描かれていない(映画のタイトルは、原題の「A Bridge Too Far」、そのままの「遠すぎた橋」)。
「史上最大の作戦」の映画化の成功もあって、ライアンの作品は連合軍の栄光の戦史を描く作家的なイメージがあるかもしれないが、本当に書きたかったのは「遙かなる橋」のほうではないかと思われる。戦争は愚行であり、残忍であること。ただ、一方、その愚行の中で究極の犠牲的精神など人間の最も高貴な面も現れるという不思議さと悲劇(この本の中でも敵の手榴弾に自ら身を投げ出して仲間を救った兵士の話が出てくる)。
「遙かなる橋」は出版ビジネスとしては「史上最大の作戦」に負けていると思うが、作品としてはコーネリアス・ライアンのベストではないかと思う。