ラリー・ウィリアムズ『ラリー・ウィリアムズの短期売買法』

ラリー・ウィリアムズの短期売買法 【改定第2版】

ラリー・ウィリアムズの短期売買法 【改定第2版】

 短期トレーディングの本を読んでいると、必ず参考文献やら推薦書やらとして登場してくる本。読んでみて、なるほどと思う。確かに、これは役に立つ。筆者自らが短期トレーディングで実績を上げてきた人だけあって、極めて実践的な内容で、データも豊富。大損をした話も包み隠さず、載せている。また、運用資金の規模が、ある程度なければ、短期トレーディングだって勝つことは厳しいこと、一攫千金は夢であることなど身も蓋もない話もしっかりと書いている。第3章にあるように「時間」と「利益」の関係にも触れ、「短期」で利益を積み上げる難しさも指摘している。時間をかけるほど利幅は大きくなる可能性があるという。そんなわけで筆者自身は1日に何回も売買するデイトレーダーではなく、「通常2日から5日のスイングでトレードする」。デイトレードは「アート」の領域の技術だと言い、いたずらに幻想をいだかせないところに好感が持てる。そして再三再四、マネーマネジメント(資金管理)の重要性を強調する。短期トレードの教科書として推奨されている理由がわかる。
 この本、さまざまな手法がデータとともに紹介されているのだが、たまたま、その中の一つとして紹介されている株価パターンを示している銘柄があったので、実験してみたら、確かに利益をあげることができた。まあ、1回のケースで検証はできないのだが、かなり実戦向きの本とわかる。だから、信奉者が多いのだろうなあ。
 目次で内容を紹介すると...

序 章 あなたはもうすでに商品トレーダー
第1章 短期のカオスのなかに秩序を見いだす
第2章 重要なのは価格と時間
第3章 短期トレーディングの真実
第4章 ボラティリティブレイクアウト−−モメンタムブレイクスルー
第5章 短期トレーディングの理論
第6章 真理の探求
第7章 勝つためのパターン
第8章 買い手と売り手を分離せよ
第9章 気配値スクリーンによる短期トレーディング
第10章 短期的に発生する特殊な状況
第11章 手仕舞いのルール
第12章 投機ビジネスについての考察
第13章 マネーマネジメント−−王国へのカギ
第14章 ケネディからオバマまで−−50年のトレード経験から得た教訓
第15章 何が株式市場を上昇させるのか
第16章 トレーディングはハードなゲーム−−その厳しい現実

 ラリー・ウィリアムズは上院議員選挙に立候補したこともある、がちがちの共和党保守派のようで、民主党、なかでもルーズベルトが大嫌いな様子。この点はちょっと違和感。ティーパーティ的な米国のリバタリアンらしく、赤字国債はもちろん、中央銀行FRB)の存在にも我慢がならないようだが、米国の株式市場がサブプライム危機やリーマン・ショックを乗り越え、活況を呈しているのは、FRBの積極果敢な量的緩和政策であり、赤字国債による財政出動があってこそだと思うのだけど...。そのあたりはどう考えているのだろう。
 ただ、政治思想は別にして、トレーディングの本としては、資金管理、リスク管理の重要性にも目配りの効いた良書。政治的にはどうかわからないが、マーケットの現実に対しては謙虚。わからないことはわからないといい、失敗は失敗と認める。だから、トレーディングで成功したのだろう。
 ちなみに読んだのはKindle版で、紙の本はこちら。

ラリー・ウィリアムズの短期売買法【改定第2版】 (ウィザードブック)

ラリー・ウィリアムズの短期売買法【改定第2版】 (ウィザードブック)

 かなり高い本だが、それだけの値段をつける自信もわかる。かなり実践的で濃い内容。セミナーを受講するよりは安いよ、という感覚なんだろうなあ。