飯田真弓『税務署は見ている』

 元・税務署員の筆者が語る税務署はどのように税務調査をしているかを詳しく教えてくれる本。節税指南本というわけではなく、税務署の行動様式を説明していく。実際のやりとりを思われる例もリアルで、税務署で使われている隠語の説明も出て来て面白い。「踊る大捜査線」に出て来る「本店」「支店」は税務署でも使うんだ(本店が国税庁で、所轄の税務署が支店)とかいった税務署トリビア集にもなっている。税を取り締まる側も、脱税を企む側も人間なんだなあ。だから、脱税のタレコミの話になると、こんなエピソードが紹介される。

私の経験からすれば、元奥さん、元愛人などには、経営者が思っている以上にきちんとした対応をしないと、特に恨みを買うことが多いように思います。

 やっぱり経営者は人間力だなあ。従業員の様子を見ていると、その会社がオカネにしっかりしているのかどうなのか、経営者だけがオカネを懐に入れているんじゃないか、ということも見えてくるという。
 で、目次で内容をみますと...

少し長いプロローグ−−税務署は何をしているのか
第0章 税務署の内部では、何をやっているのか
第1章 調査案件はこうして選ばれる
第2章 税務署は突然やってくる?
第3章 調査官はランチ中も見ている
第4章 「お土産」を口にする税理士は危ない
第5章 税務署は何のためにあるのか

 第4章の「お土産」とは、税務調査に入られるときは、多少、税金を追加で払うような案件を用意しておかないと、税務署は引き上げないという経理の人たちから、よく聞く話。筆者は、これは都市伝説の類だという。税務調査に入ったからといって、すべてから追徴するわけではないという。そうなんだ。
 しかし、知らない世界の話というのは面白い。秘密の世界を知るみたいで。