村上春樹編訳『恋しくて』

恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES

恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES

 村上春樹が選んで翻訳したラブストーリー短編小説集(最後に村上自身の作品も1編収録されている)。村上春樹の翻訳は好きなのだが、ちょっと乗りきれなかった。どの小説も面白いには面白いのだけど...。その一因は本の作り方。各小説の最後に解説がついているのだが、それと合わせて、「恋愛甘苦度」として、甘味と苦味がそれぞれ星印の数で採点されている。それがいかにも安っぽい雑誌の映画ガイダンスみたいな印象をつくって、読む気分を削いでしまった。この採点は全くの蛇足で、解説が良いだけに、残念感を倍加する。編集って大切なんだな、と思う。ラブストーリーの甘さ、苦さについて星をつけて採点しちゃいましょう、という編集の判断ひとつで本の印象も変わってしまう。それぞれの小説の中身そのものよりも、この映画採点表みたいな仕組みのほうが気になってしまった。
 村上春樹のアイデアか、編集者のアイデアか、わからないが、これはなあ...。判断は読者に委ねればいいんじゃないかと。作文のテストみたいで、採点がついているのは興ざめ。特にラブストーリーだからなあ。