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地元の新聞が地元の恥部をレポートすることには反発もあるし、ホワイトハウスの犯罪を暴くのとは別の圧迫感がある。しかも、住民の多くが信仰している教会のスキャンダル。いくつかの事件は散発的に報じられてきたが、調査報道で教会の組織的な隠蔽であることをスクープできたのは、編集局長が親会社のニューヨーク・タイムズから送り込まれたよそ者になったため、ということは大きいのかもしれない。記者が誰も知らなかったというよりも、過去にも問題が指摘され、新聞社にも告発が寄せられながら、とりあげてこなかった。知ろうとしなかったし、見ようとしなったということがだんだんわかってくる。締切に追われ、他紙との競争のなかで、手間のかかるものは避けてきたのかもしれない。そうした苦い思いに現代の記者のリアリティが見える。
告発状が寄せられていたのに、そのときはきちんと取材しなかった。しかも、告発状が来たことさえ記憶していない。そういうこともあるのだろうなあ。その間に犠牲者が生まれている。しかし、映画の中で編集局長がいうように、過去を振り返るよりも、過ちに気づいたら、改め、報道することに意味があるのだろう。「fog of war」という言葉があるが、戦争の霧の中で兵士が手探りで状況判断しながら戦うように、ジャーナリストも暗闇の中で、わずかな光をたよりに真実に近づく努力をしていくのだろう。そう考えると、「スポットライト」というタイトルは、調査報道のチーム名としてだけでなく、ジャーナリズムそのものの現実を意味するものでもあるのだな。
調査報道チームを率いるベテラン記者役は、マイケル・キートン。キートンには、ニューヨークのタブロイド紙の記者の1日を演じた「ザ・ペーパー」という映画がある。これも好きな映画。米国では、新聞記者を主人公にした映画が多いが、これなど記者の姿を描いた名作の一つだと思うんだけど。
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この「スポットライト」でも、性的虐待事件は以前から被害者グループが本を出すなど告発の動きがあった。個別の事件はインターネットでも出ていたようだ。そうした話を集め、裏付けを取り、情報の信頼性を強化し、より広い視野から大きな全体像を描き、個人の問題、個々の問題としてではなく、組織、システムの問題として捉えて、幅広い層から信頼を得ているメディアが報道する。それによって、多くの人が社会問題として認識し、最後はバチカンも動す。新聞がなくなったとしたら、この役割を果たすのは何なのだろう。ネットメディアが代わるのだろうか。
この映画が米国で公開された2015年には、「Post Trueth」とか、「フェイクニュース」とか言った言葉はまだ聞かなかったが、今になってみると、この映画が見せたジャーナリズムの意味を増してくるなあ。で、米国では、トランプ政権が誕生してから、ニューヨークタイムズの読者やCNNの視聴者が増えているという。ここへきてジャーナリズムに対する期待が高まっているようだ。新聞でも、ネットでもいいんですが、ジャーナリズムって、やっぱり大切じゃないかと考えさせてくれる映画。