有馬哲夫「原発・正力・CIA」

原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)

原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)

日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」 公開された米国の公文書をもとに、読売新聞社主の正力松太郎とCIAの関係を描く。舞台は、保守合同の時代、首相の座を狙う正力松太郎は、CIAをバックに原発の日本導入を目論む。ウソのような本当の話。事実は小説よりも奇なり、という感じ。公文書をもとにしていなければ、トンデモ本かと思ってしまいそうな内容。しかし、新聞をここまで私利私欲に利用するのもすごい。読売新聞の記者の人たちはショックだろうなあ。自分たちが血と汗で取材してきた内容を社主がCIAに流してしまうのだから。記者が意図せざるスパイになってしまった形。まあ、社主がスパイだったわけだからねえ。同じ著者で『日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」』という本があり、こちらはCIAを利用して日本初の民間テレビ局を開設する話。こっちも買ってあるんだけど、大部なので、まだ手を付けていないんだけど、こっちも読むかなあ。で、なぜ、CIAが読売を重視したか。

 読売グループは正力の支配が強いため、彼とコネクションを築けばこのメディア複合体全体を動かすことができるという利点がある。他の会社では、社主と編集主幹などの間で権力が分散しているため、複数の重要人物にアプローチしなければならない。これは秘密保持のうえで問題が大きいうえ、あえてこの危険を冒したところで思うようなけっkが得られない恐れがある。アメリカ情報機関にとって讀賣グループはもっとも扱いやすく、また親近感が持て、高い効率も期待できるメディアだったのだ。

 う〜ん。この中央集権型の構造自体はいまも変わらないのではないだろうか。