有馬哲夫『原発・正力・CIA』再読
- 作者: 有馬哲夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 新書
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今回、読んでみての感想は...。
副題に「機密文書で読む昭和裏面史」とあるように、機密指定を解除され、公開された米国の文書をもとに、原子力をめぐる正力松太郎・読売新聞社主とCIAの関係を追う。福竜丸事件をきっかけとした原水禁・反米運動の盛り上がりの中で、政治家としての野心と米国外交戦略の思惑の一致から、原子力の平和利用キャンペーン、原発誘致が進んでいくのだなあ。戦中・冷戦期のディズニーと米国の情報機関との親密な関係は知っていたが、正力時代の読売・日本テレビはCIAと、ここまで密接な関係があったのだ。記者までCIAに提供しようとしていたという。日本テレビといえば、その歴史をたどると、街頭テレビ、プロレス放送というのが、黎明期のテレビブームをつくったものとして、すぐ出て来るが、あのテレビ、CIAにおねだりしていたものだったのか。知らなかったのか。
大マスコミのトップがCIAと関係していたなんて、機密文書による裏付けがなかったら、陰謀史観とか、言われてしまいそうだなあ。
内容を目次で見ると...
プロローグ 連鎖反応
第1章 なぜ正力が原子力だったのか
第2章 政治カードとしての原子力
第3章 正力とCIAの同床異夢
第4章 博覧会で世論を変えよ
第5章 動力炉で総理の座を引き寄せろ
第6章 ついに対決した正力とCIA
第7章 政界の孤児、テレビに帰る
第8章 ニュー・メディアとCIA
エピローグ 連鎖の果てに
それにしても、平和利用キャンペーンは、未来のエネルギーというか、バラ色のイメージをばら撒いたわけだが、原発のリスクは大した問題じゃなかったんだなあ(原子力損害賠償法の話は出てくるが...)。前回、読んでから、今回までの間に起きた最大の事件は東日本大震災と福島第一原発事故だったわけだが、改めて読むと、フクシマが起きるまで「わが友原子力」という洗脳は解けなかった感じがする。それと、政治家も、経営者も、科学者も新しいものが好きで、一番乗り争いの功名心に心を奪われ、世界の流れに乗り遅れるな、という話になってしまうんだなあ。
★前回、読んだ感想はこっち...
有馬哲夫「原発・正力・CIA」 - やぶしらず通信 2008年3月25日