澤上篤人「長期投資家がニヤリとする7つのメガトレンド」

 「さわかみ投信」の澤上篤人氏の長期投資論。金融の時代から実物経済の時代、インフレの到来、新興国経済の成長と食糧・環境投資の拡大、銀行から投信、預金・債券から株式ーーといったトレンドを読む。頷けるところが多いのだが、日本も銀行から信託・投信へ流れて行くというのは、頭ではそう思っても、多くの投資家は心理的にはまだ抵抗が強いのではないかという気がした。銀行も信用できないが、投信、証券はもっと信用できないと思わているじゃないかと思えるから。
 口の悪い人にいわせると、昭和40年代の証券不況、1980年代のバブル崩壊、そして、その後の20年間の株式市場低迷時の巨大投信と、投信は何度も個人投資家の期待を裏切ってきた。100年の投資リターンで、預金・債券と株式のリターンを比べても、人間の寿命を考えると意味はなく(子々孫々に財産を残そうと言うのならば別だが)、個人投資家としては、やはり10年、20年での投資スパンで考えることになる。となると、そのレンジでの収益率で比較しないと、2000年代の預金・国債選好の強さは見えてこない。デフレ経済、株式市場の低迷、もろもろ考えると、現金で寝かしている方がいいという保守的な運用に安住してしまうのも、わかる。行動ファイナンス的には、そうなっているのでは。
 ともあれ、身近をみても、勧められたインデックス投信やら何やらを買ってみたものの、元本ベースでマイナスということになっている人が目立つ。といって、この預金・国債信仰がサステイナブルとはいえないことは、澤上氏が指摘する通りだと思う。もろもろ考えると、株式投資は今後、最もリターンが期待できるんじゃないかと思う。特に、最近のように売り込まれてくると。銀行批判をもっと省いて、読み筋をもっと増やして欲しい本だった。その点でいうと、澤上氏の本としては以前、読んだ「さわかみ流 図解 長期投資学」のほうが好きだ。