「つかこうへい死去」との訃報を聞いて、思い出した戯曲というと・・・。

 つかこうへいさんが亡くなった。映画化されたこともあり、つか戯曲というと「蒲田行進曲」が代表作として挙げられがちだが、個人的には、つかこういちといえば、これ。

熱海殺人事件 (角川文庫 (5980))

熱海殺人事件 (角川文庫 (5980))

 最初に読んだとき、戯曲で、こんなに面白いものがあるのかと思った。しかし、この戯曲本は絶版になってしまっている様子。のちに「小説熱海殺人事件」が出て、アマゾンで検索すると、この「小説」版のほうが上に来たりする。戯曲の方は、文庫で言うと「初級革命講座・飛龍伝」はまだ出ているみたいだけど、戯曲の出版は難しいのか。ちょっと寂しい。
 で、日本の劇作家というと、別役実唐十郎井上ひさし野田秀樹鴻上尚史松尾スズキ三谷幸喜宮藤官九郎など多士済々だが、じゃあ、実際に戯曲を読んで印象に残っているものが「熱海」以外に何があるだろうかと考えて、まず頭に浮かんだのはこちら。
サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

 女性だけで演じられる「サド侯爵夫人」、男だけの政治劇「わが友ヒットラー」、ともに面白い。前者は「芸術とは何か」「自由とは何か」、そして後者は「政治とは何か」というドラマ。三島由紀夫は小説だけでなく、戯曲の名手でもあって「鹿鳴館」「近代能楽集」も面白かった。
 これはすぐに頭に浮かんだのだが、しばらく考えて、ああ、こんな戯曲もあったと思い出したのはこちら。
友達・棒になった男 (新潮文庫)

友達・棒になった男 (新潮文庫)

 安部公房の戯曲。不条理劇というのか、奇想天外な設定から人間の本性がえぐり出されていく。一時期、安部公房はポピュラーで、ボクもずいぶん、はまったものだが、最近はあまり話題にならないみたい。「幽霊はここにいる」などというのもあったが、こちらは絶版になっている様子。最近、NHKショートショートドラマ(アニメ・実写)の影響もあって星新一が再評価されているようだが、最相葉月の「星新一 1001話をつくった人」を読んでいたら、1960年代には、星と安部はライバルとみられていた時期があったという。星が今の時代でも面白いように、安部の面白さも再評価されてもいいと思うのだが。
 ということで、つか、三島、安部。並べてみると、何の脈絡もない3人だが、ボクの頭の中では「面白い戯曲を書いていた人」というククリで、つながっている。