ウィキリークスが米外交機密公電を公開。北朝鮮、イラン、アフガニスタン、中国とグーグルなどなど...

内部告発サイト「ウィキリークス」は28日、米政府の外交公電約25万点の公表を始めた。米韓両国による北朝鮮体制崩壊・南北統一をめぐる協議や北朝鮮からイランへのミサイル移転、中東諸国の対イラン攻撃要請などを記録した機密情報も含まれ、世界各国との外交関係に著しい影響が出る可能性もある。

 ウィキリークスが今度はここ3年ぐらいの外交機密公電を公開。生の公電だから、微妙な話、不適切な話が大量にあるらしい。しかも、朝鮮半島、中東、中国のハッキングなど広範囲に及ぶ。人間関係だって本音を生で出せば、気まずくなるわけで、米国外交には大ダメージでしょう。それよりも何よりも大使館と国務省の間の機密公電がジャジャ漏れになっていたわけで、米国の防諜体制がどうなっているのかという話にもなる。暗号化もされていなかったのだろうか。それとも簡単に解読されてしまう暗号だったのか。日本の公安テロ文書流出事件といい、米国も日本もどこかでシステムが壊れているのか、インターネット時代についていけないのか。
 で、今回の場合、従来のウィキリークスとちょっと違うのは、ウィキリークスが公開する前に、米ニューヨーク・タイムズと英ガーディアンなどがウィキリークスが入手した内容をいち早く報道していること。世界の選ばれた有力メディアにウィキリークスがリークしたのだろうが、既存メディアを巻き込んでの機密文書暴露になってきた。
 で、ニューヨーク・タイムズはこんな具合に始まる...

A cache of a quarter-million confidential American diplomatic cables, most of them from the past three years, provides an unprecedented look at back-room bargaining by embassies around the world, brutally candid views of foreign leaders and frank assessments of nuclear and terrorist threats.
Some of the cables, made available to The New York Times and several other news organizations, were written as recently as late February, revealing the Obama administration’s exchanges over crises and conflicts. The material was originally obtained by WikiLeaks, an organization devoted to revealing secret documents. WikiLeaks posted the first installment of the archive on its Web site on Sunday.

 ガーディアンの記事はこう始まる...

The United States was catapulted into a worldwide diplomatic crisis today, with the leaking to the Guardian and other international media of more than 250,000 classified cables from its embassies, many sent as recently as February this year.
At the start of a series of daily extracts from the US embassy cables ? many designated "secret" ? the Guardian can disclose that Arab leaders are privately urging an air strike on Iran and that US officials have been instructed to spy on the UN leadership. These two revelations alone would be likely to reverberate around the world. But the secret dispatches which were obtained by WikiLeaks, the whistleblowers' website, also reveal Washington's evaluation of many other highly sensitive international issues.

 で、両メディアをもとに様々な報道が...
中国政府主導でハッカー…米公電を報道 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) => http://t.co/vwPFtqz
時事ドットコム:英王族が「不適切な行動」=米機密文書−ガーディアン紙 => http://t.co/Z8norgw
asahi.com朝日新聞社):ウィキリークス、米外交文書暴露 国連幹部にスパイ活動 - => http://t.co/NdtECZL
グーグル侵入「中国の妨害」情報も 米外交文書漏えい:日本経済新聞 => http://t.co/TZEqaT4
露トップ2は「バットマンとロビン」、ウィキリークスが暴露した米外交公電 : AFPBB News => http://t.co/CsQwjc3
 ということで、今回はメディアを巻き込んでの外交機密文書暴露劇となった。国防総省ベトナム秘密報告(ペンタゴン・ペーパー)をニューヨーク・タイムズがスクープしたときは、政府が公開差し止め請求を出すなど、「国益」に関する論争があったわけだが、今回はメディアはどうだったのだろう。昔のように新聞社内で公開の是非をめぐる激論はあったのだろうか。ウィキリークスが公開するんだからと、自分ではあまり判断せずに報道してしまったんだろうか。
 外交機密公電が漏れてしまっていることを知らせるのは国益だろうが、その赤裸々な中身まで公開することは国益なのかどうか...。ちょっと疑問だけど。北朝鮮問題で、中国も入れて微妙な外交的調整が必要な時期に、こうした文書が出てくるのも...。
【追記】
 ウィキリークスから情報提供を受けた欧米のメディアは掲載判断理由を明らかにした。

米紙ニューヨーク・タイムズNew York Times)、英紙ガーディアン(Guardian)、仏紙ルモンド(Le Monde)は28日、内部告発サイト「ウィキリークスWikiLeaks)」が入手した米外交公電の掲載を決めた理由や、一部の情報を公表しなかった理由を明らかにした。ニューヨーク・タイムズ紙は「ほかの資料にはできないかたちで、米国外交の目的、成功、妥協、いらだちなどに光を当てている」と評価。「(掲載は)公益に資する」と述べた。ガーディアン紙は、入手した公電の大半はすでに米政府のイントラネット上に掲載され、「非常に幅広い」人々が目にしていたため、機密性は高くなかったと指摘した。またルモンド紙は、「資料を精査してジャーナリスティックな分析を行い、読者に提供すること」が同紙の役割だと表明。情報提供は責任を伴うとして、「透明性と判断は相いれないものではない。そこがウィキリークスとわれわれの戦略の違いだ」とした。

 やはり、こうしたところはしっかりしているのだな。一方、リスクを考えて情報を伏せたところもあるらしい。それでも、危うさは残るような気もするが...。