かつてのバイオの星、林原が私的整理

甘味料の天然糖質「トレハロース」の開発などで知られるバイオ企業「林原(はやしばら)」(岡山市北区、林原健社長)とグループ企業3社が、私的整理の一つ、事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を第三者機関の事業再生実務家協会に申請し、受理されたことが26日、わかった。負債総額は約1400億円とみられる。(略)民間調査会社によると、トレハロースなど主力商品の売り上げは好調だが、恐竜化石の発掘や類人猿の研究センター、抗がん剤の研究などの幅広い事業展開に伴う巨額の投資が経営を圧迫したという。

 林原といえば、かつてはバイオの星として新聞や雑誌で名前を見ることが多かった。それが久しぶりに出てきたと思ったら、倒産情報。別の記事を読むと、売り上げは800億円ぐらいらしいが、それが1400億円の負債総額。巨額の投資が経営を圧迫したというが、その中身を見ると「抗がん剤の研究」はわかるものの、「恐竜化石の発掘や類人猿の研究センター」っていったい、何なのだろう。「林原類人猿研究センター」も「林原自然科学博物館」もメセナらしいが、利益を地域や社会に還元するのではなくて、借金でやっていたということなんだろうか。となると、乱脈経営という感じがするが...。しかも、日経によると、不正経理疑惑もあるらしい。
バイオの林原、私的整理申請 不正経理疑惑で支援難航も日本経済新聞 => http://t.co/dRKePq8
 巨額の投資を伴うリスクのある開発を手がけるならば、ベンチャーとして、株式を公開して資金を調達すべきだったのではないんだろうか。リスクマネーをマーケットから集めるとともに、経営の透明性も高めるというのが経営の常道だったような気がする。マーケットの目にさらされることは経営が自らを律することにもなる。
 ちなみに岡山県産業支援ネットワークのサイトにある「株式会社・林原生物化学研究所」の説明は、こんな具合...

林原は、明治16年、岡山の旭川のほとりで創業された水飴製造業“林原商店”としてスタートしました。現在では、酵素・微生物とバイオテクノロジー産業のトップメーカーとして、トレハロースをはじめとする澱粉糖化製品、抗ガン剤となるインターフェロンなどの医薬品原料、安定型ビタミンCなど化粧品原料、さらに写真フィルムや光ディスク用の機能性色素などの研究・製造・販売を中心とするグループ企業へと発展してまいりました。(株)林原生物化学研究所は林原グループ内で、研究・開発及び医薬・化粧品原料などの製造・販売を担当しています。
林原グループはまた、メセナ活動にも力を注ぎ、地元岡山の備前刀や備中漆などの伝統文化を保護・育成や、自然科学博物館の建設を目標としたゴビ砂漠での恐竜化石調査も行っています。

 恐竜はやっぱりメセナ活動か。経営環境は変わっても、地元の名門企業意識が抜けなかったのだろうか。ゴビ砂漠まで行っていたのか。経営者は大谷光瑞を夢見たのだろうか。

★林原ホームページ

 http://www.hayashibara.co.jp/

★林原類人猿研究センター

  http://www.gari.jp/

★林原自然科学博物館

 http://www.hayashibaramuseum.jp/

独創を貫く経営-私の履歴書- 恐竜研究所へようこそ (単行本図書) 創造のちから―「不思議な企業」林原の発想