独裁政権下では新聞もテレビも政府に支配される。エジプト革命では、市民にとってのメディアの主役はソーシャルメディアになってしまった*1。テッククランチ(TechClunch)が以下のような記事を掲載していた。
エジプトの抗議デモ犠牲者たちのメモリアルが1000Memories上でヴァイラルに生成 => http://t.co/l6ydOA8
反政府運動に参加して命を落とした犠牲者たちのメモリアルサイトができたという。それがこちら。
Egypt remembers | مصر تتذكر => http://1000memories.com/egypt
「エジプトは忘れない」というタイトルで、犠牲者の写真が並ぶ。写真にマウスをあてると、その若者がどのように殺されたかという説明が表示される。射殺された青年もいれば、バットで撲殺された女性もいる。さらに写真をクリックすると、その人の思い出の写真、経歴、親族・友人の記帳が現れる。
ソ連の独裁者、スターリンは「1人の死は悲劇だが、100万人の死は統計(数字)でしかない」と言ったという伝説がある。これがスターリンの発言であったにせよ、なかったにせよ、これほど権力者の心理をうまく表現した言葉はない。数字には何の痛みも感じない。この追悼サイトは日々、メディアで報じられる死者の数が、単なる数字ではなく、そのひとりひとりに人生があったことを教えてくれる。彼らの犠牲を忘れてはいけないことを。
今回のインターネットを駆使したエジプトの市民運動は国境を越えたところにも、その怒りと悲しみを熱く伝えてくれる。先日、拘禁を解かれたグーグル幹部のワエル・ゴニム(Wael Ghonim)氏も、そうした熱気を生み出しているサイバー活動家のひとりだが、彼の活動拠点となっているフェイスブックはこちら。
We are all Khaled Said => http://www.facebook.com/elshaheeed.co.uk
このページを読むと、カリド(Khaled)とは28歳の時に、警察による暴行・拷問で殺されたエジプト人の青年の名前。カリドを暴虐からの自由を求めるエジプトの人々のシンボルとし、祖国に自由と尊厳の回復を求める。ウォールでは、市民に10日、11日とデモへの参加を訴えるとともに、世界中の人々支援活動を求めている。昔はガリ版刷りで密かにビラをつくって配布したり、市民に行動を訴える演説をカセットテープに吹き込んで回したりしていた地下活動が、いまはソーシャルメディアで展開されるようになったのだな。苦労して海外の支援者に文書を運び出さなくても、あっという間に伝達できてしまう。加えて、インフラとなっているインターネットは、もはやビジネスをはじめ、あらゆるコミュニケーションの重要な基盤なので、そう簡単に遮断もできない(エジプト政府も一度は試みたが、反政府はダイヤルアップで電話回線をつかったり、すぐに抜け道を探すから、いったんソーシャルメディアが爆発したら、止めきれない)。
フェイスブックがこうした形でつかわれるようになるとは、マーク・ザッカーバーグは想像していのだろうか。オープンな世界にして、世界を変えるという彼のビジョンが現実化しつつあるわけだが。
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
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