家プロジェクト(直島)

家プロジェクトは直島・本村地区において展開するアートプロジェクトです。宮島達男による「角屋」(1998年)に始まったこのプロジェクトは、現在、「角屋」「南寺」「きんざ」「護王神社」「石橋」「碁会所」「はいしゃ」の7軒が公開されています。現在も生活が営まれる地域で、点在していた空き家などを改修し、人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら、空間そのものが作品化されています。また生活空間の中で繰り広げられる来島者と住民との出会いは、さまざまなエピソードを生み出しています。

 香川県・直島の「家プロジェクト」。古い町並みの中に点在する空き家を改修して、現代アートを配すというプロジェクト。最初は島の民家の保存プロジェクトと誤解していて、それほど興味を持っていなかったのだが、実際に行ってみて関心・感嘆。これは面白い。古い民家に現代アートが奇妙にマッチしている。以下のような順番で回ってみた。
(1)南寺(ジェームズ・タレル/設計:安藤忠雄
 偶然だったのだが、最初に、ここへ行ったのが良かったのかもしれない。真っ暗な空間に案内され、倉山の中で座っているうちに、眼前に長方形のスクリーンがボウっと浮かび上がってくるという不思議な体験。ちょっと宗教がかっている感じもするが、面白い。ここで「家プロジェクト」に飲み込まれてしまった。日常の中に非日常的なアートな世界がある。
(2)角屋(宮島達男)
 古い民家の暗い室内に、数字や文字が点滅する池がある。これまた不思議な空間。面白い、面白い。
(3)護王神社杉本博司
 神社の跡がアートになっている。石室と本殿を結ぶ階段は地下から地上へとつながる。静かな空間。石の白さが美しい。杉本氏の作品は、ベネッセハウスのパークやミュージアムにもある。
(4)碁会所(須田悦弘
 ここは入り口が分かりにくく、最初は通り過ぎてしまった。前の3作のインパクトが強烈だったために、ここは普通の民家に見えてしまう。古い観光地に行くと、こういうところがあるなあ、みたいな。個性派揃いの家プロジェクトの中では印象が薄くなってしまう。
(5)はいしゃ(大竹伸朗
 ここは民家を好き勝手に改修して、現代アートにしてしまった家で、ある意味、痛快。ここまで、やりたいようにやれば、楽しいだろうな、という明るさがある。ドアを取り払った、洋式便器むき出しのトイレなど、デュシャンか、といったところ。ちょっとコミックにでも出てきそうな風景。こういう面白いのがあるから、碁会所のイメージが薄くなってしまう。
(6)石橋(千住博
 家プロジェクトの他の民家とは、ちょっと離れていて、雰囲気のある小路を抜けていくと、たどり着く。そこに千住博氏が襖や壁いっぱいに描いた滝がある。これは味わいがあった。庭は写真だと、緑の芝生の中に横長の石が配されているのだが、季節のせいか、庭の芝はまだ青くなかった。
 こうした順番で回ったのは偶然なのだが、南寺に始まり、石橋に終わるというのは、なかなか良かった。それぞれが個性的で楽しめる。直島は面白いと聞いていたが、確かに、ここはすごい。単館(400円)でも入れるというが、全館通しの1000円チケットがおすすめ。
★家プロジェクト (ベネッセアートサイト直島)サイト
 http://www.benesse-artsite.jp/arthouse/index.html

直島 瀬戸内アートの楽園 (とんぼの本)

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